Wi-Fi Direct とは
「Wi-Fi CERTIFIED Wi-Fi Direct®」とは、ある特定のデバイスがWi-Fi Direct機能をサポートしていることを認証するプログラムです。この認証があれば、家庭内やオフィス、ホットスポットで無線Wi-Fiルーター無しでもデバイス同士で相互に直接接続することができます。技術的にはWi-Fi P2P(Wi-Fi Peer-to-Peer)の原理を用いており、従来のWi-Fi 802.11規格による無線接続に加えて、たとえ無線ルーターやアクセスポイントの無い場所であっても、他のWi-Fiデバイス間で同期、ファイル共有、印刷、リアルタイム表示などができます。ABI Researchの報告(図一)によると、Wi-Fi Direct対応機器の出荷量は2013年だけで6.36億台に達しており、2018年には30億台以上のWi-Fi対応機器(タブレットの90%、携帯電話の61%、テレビの57%)がWi-Fi Direct機能を搭載すると予想されています。市場の規模は非常に大きく、産業間におけるデバイスや技術間の統合が重要になってきます。
しかし、Wi-Fi Direct機能をサポートするIT製品は数多く存在するものの、標準化されたアプリケーションプログラムが存在しないため、各社が開発したP2P接続対応の機器同士で相互接続ができない問題が頻繁に発生しており、エンドユーザにとってP2Pのメリットをフルに活用できない結果となっています。この点を踏まえ、Wi-Fi Alliance(以下WFA)は「Wi-Fi CERTIFIED Wi-Fi Direct® Services」認証規格を新たに発表し、4つのカテゴリの標準化を目的に(図二)、Wi-Fi Directの現行技術に一連のプラットフォーム機能を付け加えました。これは、開発ベンダーに同一レベルの開発プラットフォームを提供し、P2P技術を運用しやすくするものです。認証デバイスは全く新しいプログラムをサポートするとともに、ワンステップで「機器の特定、接続、操作」を行うことができるようになります。更に、一般的な使用状況やタスクに対し、リアルタイムで相互接続できるようになりました。これによってWi-Fi Directを利用したP2P接続の使い勝手が全面的に向上しています。
Wi-Fi Direct Servicesカテゴリ一覧
- Send Service:最小限の操作で、1台または複数のデバイス間で簡単・迅速にコンテンツの送受信を実現できるサービス。
- Play Service(DLNA):DLNAによって、ストリームコンテンツへ接続する前にデバイス同士が相互に検出できるサービス
- Display Service(Miracast):Wi-Fi Directにより、Miracastを用いてスクリーンを共有するサービス。
- Printing Service:Wi-Fi Direct機能が搭載されたプリンタに対して運用され、簡単なコマンド動作により、携帯、タブレット、PCから文書や画像を直接印刷できるようにするサービス。
- Enable Service:アプリケーション開発者が、Wi-Fi Directのプラットフォーム上で別の機能やパッケージソフトを開発できるようにするサービス。
Wi-Fi Direct Services Sessionについて
WFDSのアーキテクチャは、Wi-Fi Directをベースに、Application Service Platform(ASP)を運用してWi-Fi Direct Services Sessionを立ち上げる形で構成されています(図三)。
Wi-Fi Direct Service Session一覧
Discovery
WFDSのディスカバリー機能は、Wi-Fi Direct搭載機器の特定を行います。ディスカバリーメカニズムは「Probe Request/Response Frame」と「Service Discovery Request/Response Frame」のいずれかまたは両方のやり取りによって行われます。
P2P Connection
P2P接続はP2Pグループを形成するセッションです。このセッションはWi-Fi Peer-to-Peer (P2P) Technical Specificationによって定義された方式で行われます。
ASP Session
ASPセッションは特定のデバイス上のASPと別のデバイス上のASP間の論理リンク(logical link)を行うセッションです。ASPのセッションが開始するために、P2Pデバイス間のP2P接続が必要です。
Service Session
Serviceセッション(ASPセッションによって決まる)は、特定のデバイスのServiceと別のデバイスのService間の論理リンクを行うセッションです。
Wi-Fi Direct Servicesをサポートするデバイスは次のような役割を果たします。
Service Advertiser
サービスを宣言するデバイス。 例:プリンタの印刷機能など。
Service Seeker
使用したいサービスを宣言するService Advertiserを探し、見つけ接続リクエストを出すことができるデバイス。 例:文書の印刷したいスマートフォンなど。
Wi-Fi Direct Services認証取得プロセス
Wi-Fi Direct Servicesは、認証試験としてはまだ強制取得ではありませんが、市場における多くのWi-Fi製品の相互接続性、使い勝手の悪さといった問題を解消できるところに意義があります。このため製品メーカーが開発設計、機器認証を進めるに当たり、Wi-Fi Direct Servicesは品質保証上、不可欠となる認証項目のひとつとなることでしょう。Wi-Fi Direct Services機能を適応できる製品は、画像、文字、映像、音声といったコンテンツをサポートするテレビ、スマートフォン、プリンタ、タブレット、ウェアラブルといった製品群であす。これらは現在の市場で盛り上がりを見せており、現代人の生活に欠かすことのできないものとなっています。
特に注意が必要なのは、Wi-Fi Direct Services認証を取得する前に、次のWi-Fi認証を取得しておかなければならない点です(図四)。
- Wi-Fi CERTIFIED n
- Wi-Fi Protected Setup 2.0 (WPS 2.0)
- Wi-Fi Direct
もし Wi-Fi Direct-Display Services認証を取得したい場合、上記とは別に、次のWi-Fi認証を取得しておく必要があります。
- Wi-Fi CERTIFIED Miracast
W-Fi Direct Services認証の内容
Application Service Platform (ASP) Tests
Discovery、Connection、ASP Session Managementといった、Wi-Fi WFDS FrameがWFAの規格に準拠することを確認します。これは必須の試験項目であり、試験対象機器(Device Under Test:DUT)が、Send、Play、Display、Print、Enable Servicesのいずれの機能をサポートしているかにかかわらず、この試験に合格しなければなりません。
Send Service Tests
Discovery及びConnection規格に対する準拠確認を行います。試験対象機器がWi-Fi Direct-Send Serviceの仕様を満たし、ファイルを正常に送受信できることを確認します。
Play Service Tests
Wi-Fi Direct-Play Serviceの仕様を満たし、DLNA経由で映像/画像を正常に送受信できることを確認します。
Display Service Tests
Wi-Fi Direct-Display Serviceの仕様を満たし、Miracastによって映像/画像を正常に表示できることを確認します。
Print Service Tests
Wi-Fi Direct-Print Serviceの仕様を満たし、文書や画像が正常に伝送/印刷されることを確認します。
Enable Service Tests
Wi-Fi Direct-Enable Serviceの仕様を満たし、Enable API設定値、範囲が規格に適合していることを確認します。
Wi-Fi Direct Services認証を取得するには、他のWi-Fi認証も合わせて取得する必要があるため、作業日数にして10日間以上を要します。加えて、再確認試験やデバッグに要する期間が加わる可能性があることから、Wi-Fi Direct Services認証を取得したい開発ベンダーに対しては、時間的な余裕をもってプロジェクトを組むようアドバイスしています。
Wi-Fi Direct Serviceが実現するネット接続の新たな時代
アリオンはWFAの正式な認定を受けた第三者認証試験機関として、Wi-Fi CERTIFIED ac、Direct、Miracastなど、関連するWi-Fi 認証プログラムをすべて提供しています。また、Wi-Fi認証の専門家という立場から製品開発におけるアドバイスを行っており、認証試験や品質検証に対する分析を提供することで製品を市場に発表するまでのお手伝いをしています。本記事の詳細な情報、Wi-Fi 認証試験に関しましては、以下の窓口までお問い合わせください。
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