無線データ通信の技術とモバイルデバイス市場の急速な発展にともない、大容量データをユーザー間で共有したいというニーズが高まりを見せています。幸した流れを受け、IT製品の品質検証・認証試験ラボであるアリオンでは、台湾の経済部情報産業発展推進チーム、財団法人 情報産業促進会、TEEMA(情報通信産業連盟)と協力して、「次世代無線通信シンポジウム 相互接続性プラグフェスト」を台北で開催しました。これは、製品メーカーの技術レベルの底上げを図るとともに、メーカー同士の交流と協力を促し、市場にあるワイヤレス製品や技術の相互接続性を高めることを目的としています。

相片-2014-12-18-14-06-082

 

プラグフェストでは、新しい無線通信技術を中心に、Z-WaveHTC ConnectMiracastといった無線通信技術をめぐる業界の動向と技術の発展状況を紹介し、参加メーカー各社にはMiracast製品の相互接続性テストを体験してもらいました。このテスト体験では、デジタルコンテンツの伝送・受信・アップロードという、データ共有の一連の過程における使用環境と条件を設定し実施しました。これには、参加メーカー各社に技術的要件の理解を促し、無線通信業界のアプリケーションの最適化を図り、複数の対応機器をWi-Fi接続する次世代技術を確立しようという狙いがありました。

Miracast2012年の発表以来、WPSWi-Fi Directという二つの技術をベースに、「誰もが簡単に使える技術」をコンセプトにしており、発表後、この技術に対応する製品が増加しています(Miracastの詳細については、こちらの記事(英語)をご参照ください)。米国の調査会社であるNextMarket Insightsのリサーチによると、Miracastに対応するディスプレイ機器の出荷量は2013年で700万台に達しており、2017年には1.29億台にまで達することが予想されています。

Miracast and DIAL-enabled display device shipments (Millions)

image

 Source: NextMarket Insights

Miracastの発表から二年間の期間を経て、Miracast対応の製品は増加し続けています。一方、データ共有のニーズを満たすため、メーカー側では簡単に操作できて安定性の高いMiracastサポートデバイス開発が求められていました。アリオンはMiracast規格の品質と機能を検証するため、Miracast製品との相互接続性プラグフェストを主催し、製品メーカー各社に交流の場を提供してMiracast相互接続性テストを体験して頂きました。このテストの過程において、アリオンのワイヤレス専門認証チームが具体的な問題点を現場で確認しています。

Miracast対応製品の開発・検証のための参考情報として、Miracastの相互接続性、RF無線信号、ユーザビリティの各テストにおいて頻発した問題点の分析結果を以下に記載しています。

問題点 その1:接続不可能、または接続の不安定化

Miracastは「Source」(送信元)と「Sink」(受信先)を接続するための汎用規格です。技術的には、Source(スマートフォンやタブレット等、マルチメディアコンテンツを送信できるWi-Fi対応機器)とSink(テレビ、プロジェクタなど、マルチメディアコンテンツを受信して表示するWi-Fi対応機器)を結び付けて動画のストリーミング再生を可能にする無線通信技術であり、接続性と利便性を備えているためエンドユーザーの体験レベルを向上させることができます。たとえば、ユーザーはスマホで撮った画像やビデオ、ネットの動画共有サービスを、そのまま大型サイズのディスプレイで表示、ストリーミング再生することができるのみならず、逆にテレビ番組やPCのコンテンツをスマホやタブレットで見ることもできます。

今回の相互接続性テストや、これまでのアリオンのテスト実例に照らすと、最も頻繁に発生する問題は、二台の機器が「接続不可能」または「接続不安定」状態になり、切断、休止、再起動といった状態に陥ることでした。これらの問題は、二台の機器がいずれもMiracast認証を受けているにもかかわらず発生しています。これはつまり、市場に存在する数千種類にのぼる製品が完全な相互接続性を確保することが難しいことを示します。メーカー各社の独自規格やオプション機能など、最終的なMiracastの品質と機能に影響する要素が数多く存在しているからです。今回も、数多くのMiracast対応機器を準備し、メーカー各社が持ち込んだ製品と接続性試験を行いましたが、接続不可能また不安定化の問題がほとんどすべての製品において少なくとも一回は発生しました。この点を踏まえると、Wi-FiまたはMiracast認証の試験を行うだけでなく、アリオンのような試験ラボで大規模な相互接続性テストを実施し、市場における自社製品の安定性を確保することが勧められます。

問題点 その2:画像表示の互換性問題があること

Miracastで映像を流すときに最もよくある問題としては、画面の遅延、表示の崩れや乱れが起きたり、音声が出ていないことがありました。Sink側でSource側とのリンクに成功した後、テレビ側におけるミラーリングに不具合があり、ひどいときには全く表示できないこともありました。Sink/Source側の両方で画像表示の互換性について検証を行い、スムーズな動画再生を確認する必要があることが分かりました。

未命 2

問題点 その3:ケーブルの品質にばらつきがあること

製品に搭載されている無線技術以外の部分だと、テレビやプロジェクタにMiracastをサポートさせるためのドングルを装着する場合、接続I/FとなるHDMIケーブルの品質がとても重要です。付属のHDMIケーブルの品質にはバラつきがあり、画面がうまく同期表示できない現象が発生しました。このことから、Miracastによる無線送信、ドングル経由の有線HDMI接続といった、異なるユーザー行動シナリオごとにきちんと検証する必要があることが分かります。ケーブルとコネクタの品質がドングルの送信能力に間接的な影響を与えることは、メーカーやユーザーに軽視されがちな点です。無線通信機能だけでなく、付属ドングル、ケーブルとコネクタについても接続試験を実施して、データ伝送機能の確保を徹底させることが望まれます。

問題点 その4:RF信号干渉問題が発生すること

RF信号干渉は、無線通信技術で避けて通れない問題です。対象機器の位置関係と無線信号帯域が相互に影響を及ぼし合うことでRF信号干渉が起き、無線データ送信のパフォーマンスに影響します。左の画像はRF干渉の一例です。スマートフォンの画面は全くテレビ側に表示されておらず、画像の遅延やノイズも発生しています。この原因を調べるために2.4G帯域の CH 1~13 RF Signal Measurementを実施したところ、Miracastが用いている2.4G信号帯域は同じ帯域の無線AP信号によって干渉され(下図左)、データ伝送パフォーマンスが不安定化しています(下図右)。無線通信干渉のコントロールは技術的なハードルが高く、研究開発の段階で対策に望む必要があります。この分野の研究に精通している専門的なラボの技術リソースを投入しなければ、信号劣化や干渉の問題を克服するのは難しいと思われます。

image

image

 image

問題点 その5:操作画面が使いにくいこと

最後に、ユーザーと密接な関係のあるMiracastのユーザー体験(ユーザーエクスペリエンス・UX)と操作の分析について触れます。Miracast対応のスマホからテレビへの表示を例にとると、一部メーカーの製品は操作画面が直感でわかるほど単純ではなく、Miracastが標榜する「誰もが簡単に使える技術」に反しています。製品の使い勝手の良さは、製品のハード面/ソフト面の品質保持と同様、製品の差別化に繋がるカギとなります。Miracastは二機種以上の製品を接続させる機能です。接続対象となる機種・メーカーにかかわらず使いやすい操作画面を設計することは、製品開発の上で検討すべき重要なポイントです。

以上の検証結果から、Miracast対応機器を開発するときには、認証試験の側面だけではなく、市場にある製品との相互接続性試験を幅広く実施しなければ、問題の発見と解決は難しいということが考えられます。アリオンでは各種Wi-Fi認証試験のワンストップサービスを提供するとともに、これまでの無線通信検証実績により培った経験から、問題が出やすい点への対策をサポートしています。RF信号干渉検証、ケーブル・コネクタ接続性試験、ユーザー満足度分析や競合他社製品とのベンチマーク比較といった検証サービスを提供することで、メーカー各社のMiracast製品開発をお手伝いしています。

アリオンはWFAの正式な認定を受けた第三者認証試験機関として、Wi-Fi CERTIFIED acDirectMiracastPasspointWPS2.0など、各種Wi-Fi認証プログラムをワンストップで提供しています。また、Wi-Fi認証の専門家という立場から製品開発におけるアドバイスを行っており、認証試験や品質検証に対する分析を提供することで製品を市場に発表するまでのお手伝いをしています。本記事の詳細な情報や、Wi-Fi 認証、接続性検証、RF信号干渉検証に関しましては、以下の窓口までお問い合わせください。

 

お問い合わせ先

E-Mail: service@allion.co.jp

Web問い合わせフォーム:http://eservice.allion.com/allion/jp/feedback.asp