デスクトップPCのWi-Fiパフォーマンスの問題点と具体策(上編)の記事で、アンテナ設計と性能の影響を紹介しました。アンテナが変更された後も、2.4GHz RXでのスループット (Throughput) は高い減衰 (100m減衰) で失敗する現象が依然としてありますが、アリオンの調査によると、ノイズの影響で受信性能が低下している可能性もあります。以下では、最初にRFパフォーマンスデバッグの基本コンセプトと実際のアプリケーションを紹介し、一定の基礎知識を得た上で、それらの問題をいかに解決すべきかについて説明します。
ノイズ干渉の原因
いわゆるノイズとは、システム自体が不要な信号を生成することを指しますが、これによりパフォーマンスに影響を与えることをノイズと呼ぶこともあります。以下、システム内で考えられるノイズの発生源とソリューションを簡単にご紹介します。
まず、ノイズの発生源や漏れを元にアンテナがノイズを受信する場所を測定する必要があります。これは放射線(Radiation)で検索可能です。下の図は、近接場高周波プローブ(Near Field Probe)を示したもので、プローブがノイズの漏れや発生源に接近すると、周波数帯域の相対的なエネルギー変化をスペクトラムアナライザーで見ることができます。
近接場高周波プローブ(左上の写真):高周波プローブの外観構造は、通常円形または棒状です。円形構造にはさまざまなサイズがあり、測定エリアのサイズと異なる周波数のエネルギー強度に影響を与え、通常広いエリアでの迅速なノイズ検索に使用します。棒状のプローブは、基板の配線や部品のピンなどの狭い場所に直接接触でき、狭い範囲におけるノイズの発生源を確認する場合に使用します。
測定セットアップ(右上の写真):通常スペクトラムアナライザーは高周波プローブで操作できますが、低ノイズアンプ(LNA)を追加すると、ノイズエネルギーが増幅され、スペクトラムアナライザで表示されるノイズがより明確になります。
ノイズ干渉解決の方向性
通常、ノイズに対処するための2つの主な方向性は、PCB回路と構造の設計ですが、PCB回路は比較的複雑で放射源となる電子部品が多く、物理的な線の接触や高周波結合(Coupling)によって製品内部でノイズが拡散します。
PCB回路ノイズのデバッグ
下の図のように、ノイズの発生源(Noise Source)は物理的な接続線を介してノイズを他の回路に伝達します。カップリング現象は、黄色のプリント回路ラインに青色のプリント回路のノイズが交差するようなもので、2つのラインは接続されていませんが、黄色のラインはノイズによる干渉を受けています。
回路ノイズルートの基本を理解した後、実際の回路ノイズデバッグプロセスでは、次のような課題やコストの増加の問題が発生します。
1. フィルタコンデンサやコモンモードフィルタ、または面積の大きいグランド(Ground)などを追加する可能性があり、材料コストが増加する
2. 回路設計を変更すると、PCBの再洗浄が必要な場合があり、コストアップの要因の1つとなる
3. 回路がより複雑な場合、ノイズのデバッグが不正確となり、ノイズ発生源の主な原因が特定できないため、変更した回路が基準の期待値を満たすことができない
4. ノイズはCPU、メモリ、USBシステムチップ、HDMIの様に高速伝送回路など必要な重要部品から発生し、データ伝送や放熱に問題が起こる可能性があるため、関連する回路にコンデンサ、フィルター、金属シールドを追加することができない
実務で回路のデバッグに限界があれば、構造設計を変更して解決することになります。優れた構造設計によって、回路を変更せずとも期待していた成果を得ることができます。
構造設計ノイズのデバッグ
PCBA上の金属シェードや筐体内部及び外部の構造など、構造設計のノイズデバッグにはいくつかの方法があります。
1. PCBAの金属シェード
2. 筐体(chassis)内部の構造
3. 筐体(chassis)外部の構造
事例共有 ― ノイズ干渉はどのように解決できたのか?
■ テスト結果
今回の事例に戻り、上述した知識をもとにノイズ干渉現象をどのように改善すべきか考えてみましょう。
前回ご紹介したアンテナ位置の設定により、その位置がフロントとリアに1つずつ変更されているため、ノイズ処理では2つのアンテナを個別に独立して処理する必要があります。
Step 1:下の図のように、RFプローブとスペクトル分析を活用してノイズ漏れがある箇所を見つけ、それに対処するためのソリューションを追加します。
Step 2:以上のソリューションで調整後、スペクトルアナライザーを使用してノイズの変化を確認することができます。
ノイズデバッグ実施後、補助アンテナのノイズ強度は約8dB、メインアンテナのノイズ強度は約3dB それぞれ減少しました。これらのソリューションが、アンテナの受信するノイズを低減するのに効果的であることを意味しています。これにより、スループットテストを実行して、ノイズに対するソリューションでスループットがどの程度向上するかを確認できます。
下の表から、アンテナ(ANT)の位置調整とノイズデバッグのソリューションで段階的に改善することができ、シミュレーションした減衰距離20mのRXスループットが継続して最適化されていることがわかります。これは、アリオンの作成したデバッグ方法がすべて効果的であることを意味しています。
続いて、下の表で示す減衰距離100mのスループットテストでも、スループットの向上が見られますが、HT20 CH1とCH11はまだ40Mbpsのスペック要件を満たしておらず、前述した通り、さまざまなデバッグ方法を駆使すれば期待される目標を達成できる、というわけではありません。
実際のアプリケーションで分析すると、100mはすでにかなり遠い距離ですが、RXはまだ一定のスループットを維持しており、エンドユーザーが体感する差は非常に小さいでしょう。
結論
この実例のお客様は、デバッグ方法のコスト増に加えて、プロジェクトの進捗状況、市場競争やエンドのユーザーエクスペリエンスなどの状況評価に懸念をお持ちでした。最終的に、アリオンが提案したソリューションを採用し、製品をスムーズに市場にローンチすることができました。これは、アリオンがデバッグソリューションにおいて、導入の効果、コスト、導入実現可能性の全てを考慮し、お客様が製品の修正と発売を迅速に実行できたことを意味しています。
近年、デスクトップコンピュータのWLAN機能追加に加えて、近年ますます多くのIOT製品が増え、監視カメラ、自動車、家電など多くの電化製品が、リモート通信、制御、オーディオビジュアルなどの機能のために、次々とワイヤレス機能を追加しています。一般論として、規模が小さいメーカーやRF分野に参入したばかりの企業では、関連する高周波の問題に対処できるRFエンジニア人材が不足していることが多いです。アリオンにはRFの経験と提供可能な関連サービスがあり、この記事で触れた様なスループット、ノイズ測定、ノイズ対策など、製品のさまざまな段階で発生する高周波問題の解決をサポートします。
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