前編のPart IではHDMI 2.1 Source機器においてHDMI2.1認証試験でよくある問題について紹介しました。本編では、それに続きSink製品の認証テストにおいてよくある問題について紹介します。

FRLの電気テストは従来のTMDSモードに比べ複雑

前編でも示した通り、HDMI 2.1における最大の変更点は、従来のTMDSモードに加えて、新たにFRL (Fixed Rate Link)伝送モードが追加されたことにあります。FRLを通して、帯域幅はTMDSの18GからFRLの48Gに向上したことで、8Kの映像データ伝送を行うことができます。FRL信号は伝送の前にLink Trainingのコミュニケーションを実施する必要があります。そのため、FRLの電気テストも比較的複雑になります。従来TMDSの電気テストでは、テストツール側の+5Vをパワーサプライに接続し、5V電圧を供給するだけで、SinkからSourceに接続した状態をシミュレーションすることができ、電気テストが行われていました。 

しかしFRLの電気テストでは、特殊な設備でSourceをシミュレーションし、SinkとのLink Trainingプログラムを実行しなければなりません。また、SinkがジェネレータのBERT信号を受信した後、Sinkのレジスタ内にエラー数が記録されます。この時、SourceはSCDCを通してSinkのエラー数を読取り、SPECの規格を満たしているか判断します。

自社開発したSCDC/EDIDエミュレータ「AJSC-1」はHDMI Forumに認可され、FRLの電気特性テストに使用することができます。このテストツールはSourceをシミュレーションし、SinkとLink Trainingを行う他、SCDCを通してエラー数を読取ることができます。

図1:SCDC/EDIDエミュレーター「AJSC-1」利用時のイメージ

Max_TMDSの新たな宣言は何か?

HDMI SourceはSinkのEDIDの内容に基づいて伝送する映像を決めなければなりません。伝送できる映像の帯域幅の上限はEDID内の最大TMDSクロックと最大TMDSキャラクターレートによって決まります。前者は25MHzから340MHz、後者は345Mcscから600Mcscとなります。

従来、この2つ数値を定義する際は、1.4と2.1 CDFの解像度を参考にして最高帯域幅を決めていましたが、このやり方には、Sourceが最大TMDSクロックと340MHzの間の解像度をSinkに伝送できない可能性があるとうい盲点が存在します。例えば、1.4の最大TMDSクロックが225MHzの場合、Sourceは225~340MHzの映像をSinkに伝送できない可能性があるということです。この互換性問題を補うため、HDMI Forumによる年初に公開された2.1a SPECの規定では、2.1Sinkが最大TMDSキャラクターレート (345MHzから600MHz)と宣告していれば、 最大TMDSクロックは340MHzと宣告する必要があります。今後、HDMI Forumによりこの規定が直接コンプライアンステストにも定義される可能性があります。

図2:Max_TMDS宣言時の注意点

HDMI信号がリピート出来ない理由

現在の電子黒板やテレビには、展示を便利にするために、電子黒板やテレビ自体がSink機器であると同時に、Repeater機器の機能が備わっているものがあり、受信した信号を下流のSinkに伝送することができます。この種の製品を設計する際は、 Repeater機器としての機能が2.1a SPECの規格を満足しているか注意する必要があります。

下の図3は、非対応のリピーター製品の例です。 

図3:非対応のリピーター製品

この4K テレビはテレビ自体がSinkであると同時に、受信した信号を下流の2K テレビにパススルーすることができるため、Repeater機能が備わっていることになります。RepeaterとSinkは同じEDIDを共有しているため、Sinkがどのような信号を受信しても、その信号をそのまま下流のSinkに伝送します。しかし、このような設計はSPECの規定に反しており、互換性の問題が生じる可能性があります。例えば、4K テレビが上流のSourceの4K信号を受信した場合、本体のパネルに表示するほか、4K信号を下流の2K テレビにパススルーします。2K テレビには2K信号を受信する能力しか備わっていないため、画面を表示することはできません。SPEC規定のRepeaterの出力はSource側の規定に適合していなければならないのですが、その中の規定の一つが、SourceはSinkのEDID内容に基づき、Sinkが対応できる映像を伝送しなければならないとあります。

この問題を解決するため、アリオンからは設計の変更案を2つ提案しています:

  • 提案1:下流のSinkのEDIDを読取るようにRepeaterを変更し、EDIDの内容に基づいて出力する映像を決定する
  • 提案2:Repeaterは依然としてSinkとEDIDを共有するが、下流のEDIDの内容に基づいて映像を変換してから出力する。例えば、4K映像を受信したら2K映像に変換してから出力する

4K使用規範における1.4bのEDID宣言問題

HDMIの映像規格はCTA (Consumer Technology Association)による規格の更新に伴いより複雑になっています。また、Sinkにより良い互換性を持たせるため、一部のメーカ製品では2つのEDIDをユーザーが切り換えられるような設計になっていて、1つのEDIDが1.4bの映像を宣言し、もう一つのEDIDが2.1の映像を宣言します。最近、HDMI Forumが2.1のテストレポートを審査している際にこのような現象に気が付いたことで、1.4bのEDIDであっても2.1 SPECに適合し、2.1関連EDIDテストの実施を要求するようになりました。

比較的見落とされがちなのが4K@24/25/30Hzです。1.4bのSPECにおいて、参照されている規格CEA-861-Dでは、 4K 映像に関しては規定されていませんでした。そのため、HDMIでは、4K@30/25/24/24(SMPTE) 映像タイミングをHDMI_VIC_1,2,3,4として独自に定義しVendor Specific Data Block (VSDB)内で宣言することにしました。 HDMI 2.1 SPECはCTA-861-Hに準拠していて、既に4K@30/25/24/24(SMPTE)のVICとして95,94,93,98が定義されています。HDMI2.1 SPECの規格を満足するため、2.1 Sink製品のEDID内容は、4K@30/25/24/24(SMPTE)に対応しているのであれば、同時にVSDB内にHDMI_VIC_1,2,3,4を記載し、VDBにVIC95,94,93,98を記載する必要があります。

HDMI認証テスト内容を事前に把握することで認証取得はより迅速に!

ここまででHDMI2.1 SourceとSink製品の設計において注意しなければならない点についてある程度理解できたのではないでしょうか。少しでもHDMI2.1試験実施を検討されるお客様またはHDMI製品の開発担当者にお役に立てれば幸いです。

繰り返しになりますが、現在ではHDMI2.1の認証試験の内容はおおよそ年に一回は更新されています。主にプロトコルの測定項目の追加で、テストの規格はコンプライアンステスト規格書(Compliance Test Specification)に基づいています。コンプライアンステスト規格書はGeneric Compliance Test Specificationに基づいているため、認証テストのスピードアップとミスを減らすためには、Generic Compliance Test Specificationの試験内容を予め把握しておき、HDMI Licensing Administrator (HDMI LA)から発表される情報に注意を向けておき、アリオンに連絡・質問等いただければ、担当者よりHDMI規格等の最新情報提供に対応いたします。

本記事の内容やHDMI認証に関してご質問などございましたら、アリオンのお問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。