モバイル製品やウェラブルデバイスに加えて、近年注目を集めているのがスマートホームです。スマートホームとはホームオートメーションテクノロジーを搭載した住宅のことで、家庭内にある電化製品の自動制御によって効率的な消費電力マネジメントを実現する技術です。アメリカで開催されたCES 2014には多くのメーカーがスマートホーム製品を出展し、会場では映像や音声といったデジタルコンテンツの導入や日常生活における実運用のデモなどを行いました。ここで注目すべき点は、各ハードウェアブランドが製品とコンテンツとの統合性を重視し始めている点にあります。ハードとソフトの統合よって相互作用がもたらされ、産業全体のエコシステムが更に強固なものとなると予測されています。
IT専門の調査会社であるIDCの調べによると、スマートホーム市場は2013年から2020年までの複合年間成長率は17.74%になると予想されており、2020年には517.7億ドル(USドル)もの市場へと成長することが予測されています。これは通信事業者やケーブルテレビ事業者がスマートホームを利用したサービスを積極的に展開することが予想されているからです。アリオンは試験専門のラボとして、多数の関連会社にスマートホーム市場へと製品を投入するための協力を行っています。本項では現在の技術状況と製品開発時に注意すべき点、および今後の市場動向を紹介します。
現在、Z-wave、ZigBee、AllSeen、LightwaveRFやInsteOnなど、多くのテクノロジーがスマートホームに利用されています。それぞれに特徴がありますが、本項では以下三つのテクノロジーに焦点を絞りました。
· Z-Wave
· ZigBee
· AllSeen
表1: ZigBee、Z-Wave、AllSeenの特徴
Z-waveとZigBeeは共に近距離無線通信規格であり、主にセンサーネットワークなど低電力、長時間運用が必要となる装置のために設計されました。Z-waveはSigma Designが開発したテクノロジーですが、技術的な国際基準を持っていないため、その活用方法はホームオートメーション化に限られています。ZigBeeはIEEE 802.15.4を基準とし、医療分野、セキュリティ分野など幅広い利用範囲を持っています。これらの両テクノロジーは共にWireless Sensor Networks(WSN)を前提としていますが、Z-waveの用途は主にスマートホームの運用にあり、一方でZigBeeは幅広い分野で活用されており、スマートホームに利用されているほか、スマートグリッドやスマートビルディングの運用もサポートしています。ZigBee、Z-Waveともに無線ネットワークテクノロジーの主流と類似した規格であり、市場においては多種多様な製品がこの二つのテクノロジーを使用していますが、現状において一つの規格が単独で市場を占領する状況はまだ見受けられません。
図1: AllSeenアライアンスロゴ
LG、クアルコム(Qualcomm)、シャープなどが構成する業界団体であるAllSeen アライアンスは、クアルコムが開発したオープンソースプラットフォーム、”AllJoyn”をベースにAllSeenテクノロジーを開発しました。これは単純にプロトコルの仕様を規定したものであり、ハードウェア設計に関するものではありません。最初のコンセプトはUPnPやDLNAと同様、TCP/IPネットワークプロトコルをベースとしたネットワークを構築することでした。Allseenの取り決めに従い、Wi-Fiやイーサネット接続を通してハードウェアを管理運用する仕組みを構築することで、日常生活の中でのスマートホームの基本理念を達成することを目指しました。
クアルコムはチップセットの大手メーカーとして、更に多くの企業がAllseen規格に参加することを期待し、ソフトウェア開発キット(Software Development Kit,SDK)を発表しており、Allseenアライアンスに加入したODM、OEMベンダーに提供しています。スマートホームは、たとえばWi-FiやBluetoothといった既存のテクノロジーを流用して作られると考えられているほか、AllSeenはZ-WaveとZigBeeの競合であるとも考えられています。ブロードコム(Broadcom)、そしてクアルコムは共に消費電力が低く、性能の高いチップ開発に専念しているため、激しい競争が市場で展開されることが予測されています。ですが、Z-waveとZigBeeの基本消費電力はWi-FiとBluetoothに比べ遥かに低いため、スマートホームの利用領域においてはアドバンテージを獲得することでしょう。
ソフトウェアとハードウェアの統合と実運用の計画に関して、以前のスマートホームのコントロールインターフェースはPCのソフトウェアであり、全てのユーザーにとって親切であるとはいえませんでした。テレビの大画面とインターネットとの接続能力を考慮し、現在の主流はスマートテレビ(セットトップボックス)とモバイルデバイスを統合することです。市場にはスマートハブなどと呼ばれる製品が多数存在し、Z-wave、ZigBee、Wi-Fiなど異なる各規格同士を接続することができます。このため、ユーザーは互換性問題を考慮する必要はありません。単純にスマートハブを通じて対応するアプリを使用することにより、市場にあるほとんど全ての製品を使用することができるようになります。
図2: スマートホームのコンセプト
スマートホームは居住環境の安全性と快適性を向上させることで、、家庭内の子供や高齢者への細かな配慮を可能にします。今日まで、スマートホームのコンセプト自体は長い間存在し続けてきましたが、市場の普及状況は芳しくありません。この根本的な理由は三つあります。一つ目はユーザーを驚かせる実用的なテクノロジーが発表されていない点です。二つ目はスマートセンサー、低電力無線コントローラー等の半導体製品はコストが高く、消費者の意向にそぐわないためです。三つ目は、スマートホームにおける互換性の標準化がまだ進んでいないためです。今後は業界内部での標準規格の策定と、開発メーカーと半導体メーカーの共同開発が必要です。
スマートウォッチと携帯電話のペアリングは比較的単純ですが、スマートフォンとスマートホームの使用環境では異なるメーカーの家電製品が混在するため、認証試験の複雑性が増します。家電製品は本来、IT製品より安定してなければなりません。それはネットワーク機能を追加したことで安定性を犠牲にすべきではありません。よって、認証試験は製品の互換性と安定性の両方を重視します。また、使用環境内にある携帯電話、電子レンジ、Wi-Fi、Bluetoothなどが相互に干渉し、製品動作に影響を及ぼすこともあります。製品のパフォーマンスを確保し、干渉によって動作が影響されないことを確認するために行うRF信号干渉試験が重要な試験項目の一つであると、アリオンの専門家は考えています。
製品単体への試験は各協会が定めますが、消費者が必要としているのは各製品同士の連携が取れた「スマート」な製品です。アリオンが誇る検証サービスは、多方面に対応したトータルソリューションを出発点とし、包括的な検証を提供することでお客様の製品における品質を確保します。そこで、当社では開発メーカーが製品開発時に特に注意すべき点として、下記の検証項目の確認を推奨します。
アリオンが推奨する検証項目
- RF信号干渉試験/感度劣化検証(RF Signal & Desense Validation)
携帯電話や電子レンジなど、スマートホーム環境内の製品が発する高周波によって製品同士はお互いに影響を及ぼし合います。アリオンではEMI、EMS、RF通信を専門とした検証チームがお客様の製品を検証します。
- APP/ユーザーインターフェース評価(APP & User Interface Validation)
無線操作の実用性を高めるため、ユーザーは携帯電話やタブレット上のコントロールアプリを使用してスマートホーム製品を使用します。よって、システムの安定性、安全性および互換性は特に重要です。iOS, Android, Windowsなど、異なるOS、異なるバージョンに渡った慎重な対応が必要です。
- 接続互換性検証(Compatibility)
接続インターフェースの多様化に伴い、製品の組合せはますます多様化しています。アリオンでは異なるブランド、製品タイプ、人気ランキング及び市場占有率を考慮して機材を選定することで、実際のユーザー利用環境を再現しています。こうした環境下で互換性試験を行うことによって、より良い製品品質を確保することができます。
- ユーザーシナリオ(User Scenario)
アリオンのUXリサーチ専門のチームではユーザーの使用環境のシミュレーション開発に力を注いでいます。これは一般家庭の状況を模擬し、テレビ、冷蔵庫、エアコン、オーディオなどの環境をシミュレートすることができます。実際の使用環境下で製品を試験し、ユーザーの観点からマーケティングレポートを作成します。これにより、開発者にとって論理的で有効な価値ある情報を提供します。
かつては一部のユーザーだけが享受できていたスマートホームは、テクノロジーの発達と関連規格の統合によって機器同士が密接に連携され、更に多くのユーザーを獲得することが予測されています。製品構成の複雑さは、認証試験そのものの複雑性を増加させました。アリオンはスマートホーム市場の動向に着目しています。綿密な認証プログラムが製品の持つ利点を強化し、市場における優位性を獲得することができることでしょう。スマートホーム検証についての詳細につきましては、アリオン株式会社 営業部(service@allion.co.jp)までお問い合わせいただくか、こちらのウェブフォームよりお問合せください。