私たちの日常生活の中で、モバイル機器はもはや必要不可欠です。しかし多くの場合、モバイル機器内部のメモリ容量は不足しがちです。そして残念なことに、写真や動画撮影、アプリケーションのダウンロードなどにより、メモリ不足の問題は改善されるどころか悪化するばかりです。多くのユーザーはこの問題を解決するために、SDカードを利用して容量を増やしています。統計データによると、スマートフォン全体のうち75%がマイクロSDスロットを搭載しているようです。多くのモバイル機器にとってSDカードは重要な機能の一つであるといえます。SDメモリ技術の業界団体であるSD協会(SD Association、以下SDA)は、絶え間なく増大する要求に対してSDカードの仕様やプロトコルの改善を継続的に行っています。

SDカード概要

元々、SDカードは記憶媒体の主流商品でしたが、市場では転送速度の遅さやデータ容量の少なさ等がネックとなっていました。しかし、最近では記憶容量や転送速度が大きく改善したSDカードが登場しています。SDASDカードを記憶容量、フォームファクター、そして読み書き機能などにより、細かく分類しています(下図参照)。例えば、SDIOカードは単にデータ記憶容量を拡大するだけではなく、インターネット対応やGPS、カメラ、Wi-FiFMラジオ、無線LAN、バーコードスキャナー、そしてBluetoothのようなホストデバイスとしての機能を追加しています。

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UHS-IIプロトコル – 超高速SDカード規格

近年、上海で開催された世界最大級の携帯電話関連の展示会である『Mobile World Congress(モバイル世界議会)』で、SDAは最新インターフェース規格であるSD UHS-IIを紹介しました。UHS-IIは、従来のUHS-Iと比較して約3倍となる最大312MB/sのデータ転送速度を備えています。

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UHS-IIカードでは、下図の赤丸部分に新たなピンを追加することで、高速転送速度を可能にしています。一列目のピンはUHS-I信号を転送し、二列目のピンで主にUHS-II信号を転送しています。つまり、従来のUHS-II非対応のホスト機器に対しても下位互換を備えています。

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Source: https://www.sdcard.org

最新のカメラでは3600万画素以上の写真を撮影することができます。UHS-IIでは、たとえばハイレゾ画質の写真や4Kビデオキャプチャといった大容量データを、ものの数秒で転送することができるのです。高速データ通信速度は、携帯ゲーム機やエンタメ製品、そして各種アプリにも高いパフォーマンスで応用することができます。

 

IoTにおけるSDカード

世の中にある様々なモノがインターネットに繋がる『モノのインターネット(IoT)』が現在のトレンドです。International Data Corporation(IDC)の調査によると、IoTデバイス市場は2020年までにおよそ1.7兆ドルにまで成長すると予測しています。また、同調査ではIoTデバイスの市場に出回る数についても300億ユニットを超えると試算されています。[Source: Norton, Steven. “Internet of Things Market to Reach $1.7 Trillion by 2020: IDC.” The Wall Street Journal. June 2, 2015]

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IoTの発展は、大きなビジネス機会を生み出すと言われています。『Mobile World Congress』では、SDAUHS-IIのほか、無線LAN対応SDカードを展示しました。このSDカードでは、写真や映像、音楽といったコンテンツを、カードに内蔵された無線LAN機能を利用することで、デジカメやビデオカメラから直接、データ転送することができます(下図参照)。

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Source: https://www.sdcard.org

IoT接続環境下では、デバイス間通信の安定性がきわめて重要です。ある特定の機器が数分間休止したことなどの影響により、データ消失という致命的な問題が発生する可能性があるからです。SDカードは安定したストレージとしての役割を果たし、IoTデータストリームを保護します。データの高速転送というアドバンテージを得たことにより、SDカードはIoTデバイスにおいて、一時的なデータのバッファリングや、バックアップ機能のためのストレージ容量を大きく進展させました。将来的にユーザーは、特定のIoTアプリの特性に最適なSDカードを、それぞれ選べるようになることでしょう。

ユーザー満足度と使い勝手を両立させるために、SDカードを製造するメーカーは、対象となる利用環境にマッチしているかどうかを試験する必要があります。たとえば産業用途では、SDカードは高温、高湿度、高圧力、振動・衝撃、放射線や高標高などの環境下で利用される可能性があります。もしSDカードがこうした環境下に晒され続けた場合、データの消失やカードの動作不良といった問題が起こり得ることでしょう。SDカードの致命的な欠陥を無くすべく、環境や安定性といった試験を、信頼性ある試験ラボで実施することが求められます。

 

車載アプリにおけるSDカード

ここ数年で、IVI(車載インフォテインメント)システムとドライブレコーダーが一般化しつつあります。高いデータ容量を持つストレージカード(SDHC, SCXC等)はこれらの利用用途にピッタリです。3Dナビゲーションとスマートカーコントロールシステムの需要が高まる中、SDカードは大きなデータ容量だけではなく、データへの素早いアクセス速度も求められています。ユーザー体験を一新するほどの早い転送速度を持つUHS-II互換製品の登場は、ユーザーにとって歓迎されることでしょう。

車内環境下において、SDカードは振動や衝撃といった影響を受ける可能性があります。スマートカー市場が世界的に成長しつつある中、様々な気候の地域、たとえば北極や南極といった非常に寒い地域や、赤道直下のような暑い地域で製品が利用されることが一般的となっています。環境温度と電源供給は、記憶媒体としてのSDカードの安定性に影響を及ぼす二大要因です。一例として、SDカードが極端な温度環境下に晒された場合、データ消失の可能性が高まる傾向にあり、スマートカーにおいては様々な機能が利用できなくなります。様々な環境に適応するために、SDカード開発メーカー各社は、各種環境試験や耐久性試験を実施できる第三者試験ラボとパートナーシップを組むことで、こうした問題への取り組みを進めています。

 

アリオンのSD規格関連試験

ISO/IEC 17025認定試験ラボであるアリオンは、SD アソシエーション(SDA)公認のテストラボ(Designated Lab)として、規格に準拠したSD規格関連のテストプログラムを提供しています。当社のSD規格関連試験では、物理層とプロトコル層に関するハードウェア試験、相互接続性試験、データI/Oストレス試験、パフォーマンス試験、挿抜耐久性試験といった、SD製品に必要なテストを網羅しており、ご希望に沿ったプランを包括的に提供しています。UHS-II規格のほか、SDHC/SDXC規格その他についても試験が可能です。ぜひ、お気軽にお問合せください。