SDカードは電子情報や、映像及び音声等の情報を保存するデバイスです。昨今では、あらゆるポータブル製品の小型化が進んでおり、中でも小型のメモリーカードは新たな時代におけるメディアフォーマットとして様々な場面で利用されています。製品の小型化が続く限り、それにともなってメモリーカード市場でも軽量でスリムな記憶媒体が求められるため、さらなる市場の発展が期待できます。現在、SDカードを代表とするメモリーカードはおもにデジタルカメラに利用されており、この他にも携帯音楽プレイヤー、プリンタ、ノートパソコン、ビデオカメラ、カーオーディオ用品、そしてスマートフォンといった製品にも利用されています。共通のフォーマットを持つことで、データは各種の端末間でやり取りでき、ネットワークの概念を形成できるようになりました。
SDカードの品質を確保
SDカードにおける品質検証 ピラミッド図
SD カードの品質検証には四つの階層があります。下から、コンプライアンス試験、パフォーマンス試験、信頼性試験、そして接続性試験です。
- コンプライアンス試験– 主に電気特性、プロトコル層及び寸法が、SDAの定めるコンプライアンススペックに適合しているか確認します
- パフォーマンス試験– SDカードの読み込み・書き込みの転送速度及び設計仕様を確認し、他社製品とのベンチマーク分析を行います。
- 信頼性試験– データ読み書きのパフォーマンスと安定性を試験し、また、製品に付加をかけストレス試験を実施します。製品の安定性、耐久性の高さは製品の品質に直結するため、品質を決定する鍵となります。
- 接続性試験– 製品の互換性を確認する試験です。製品が直面する多様な実使用条件を予め想定し、接続対象とするハードウェアやソフトウェアと問題なく使用できるかを試験します。
コンプライアンス試験はこの図で示すように最も基本となる試験ですので、多くの企業はこの部分に多くの時間とコストを割こうとするかもしれません。SDAに加入している会員企業は、認証ラボで標準スペックを満たしているかを確認することができます。
試験範囲が大きくなればなるほど、核心的な問題を発見することができますが、そのかわりに投入しなければならないコストも高くなります。パフォーマンス試験と信頼性試験は十分なマンパワーとリソースを投入しなければなりません。このため、大半の企業は経験がある認証ラボに試験を委託します。
規格への準拠は製品品質の最低標準です。各社の製品は実際の設計と生産時のパフォーマンスが異なります。このため、製品が市場で使用される場合に正常なパフォーマンスと機能を確保できるよう、接続性試験は欠かすことのできない試験です。SDカードと他製品との接続性試験を行うことより、一般消費者が使用時に発生する問題点を事前に発見し、品質を最適化することができます。
SDホスト機器の種類
SD規格は、使い勝手の良さと規格の浸透により、市場に広く普及しました。2010年にはSDカードの市場占有率は90%以上となり、キヤノン、ニコン、パナソニックやソニーといったほとんどのデジタルカメラメーカーがSDを利用するようになりました。
この他、現在発売されているスマートフォン、携帯音楽プレイヤー、プリンタ、ノートパソコン、デジタルビデオカメラ、カーオーディオ製品(下図)も標準インターフェースとしてSD規格を採用しているケースが多いです。
SDホスト製品の接続
SDホスト機器の接続性試験要件
「接続性試験」は、各種SDカード製品が、他のSDホスト機器で有効に使用できるかを確認する試験です。SD規格の互換性確認には、以下の要件を考慮しなければなりません。
l SDカードは異なる容量規格(SDXC/SDHC/SD)と互換性がなければならない
l SDカードは異なる技術規格(SD 2.0/3.0/4.0)と互換性がなければならない
l SDカードは各種SDホスト機器で使用できなければならない(microSDとアダプターを含む)
l あるホスト機器で作成されたデータは、他のSDホスト機器で使用できなければならない
製品が市場で受け入れられるために一番重要なのが、大手企業の製品と互換できることです。これは多くの企業にとって、規格のコンプライアンス試験と同等またはそれ以上に重要です。実際にSDカードとSDホスト機器間の互換性試験を行うと、新たな問題に直面するケースが多く、これらの問題を一つ一つ潰していく必要があります。
SD規格の互換性問題の研究
SDホストの互換性は、SDカードとホストの両ベンダーにとって重要な問題です。アリオンは数多くの試験用機器を保有しています。本サマリーレポートはSDメンバーコミュニティに向けて発行しました。
このレポートでは、現在市場で見られるSDホスト機器の互換性問題を分析すべく、アリオンが内部で実施したSDホスト機器の試験の結果を記載しています。調査対象のSDホスト機器の種類は10種類、1390製品にのぼり、120点の互換性問題を発見、分析しました。このうち、デジタルカメラとシステムが大数を占めていました。
よくある互換性問題の分析
120点の互換性問題について分析を行った結果、互換性問題は次の四つのシミュレーションで確認できることがわかりました。(1) Plug/Unplug Enumeration (2) User Behavior Operation (Format, I/O) (3) Power Management (Cold/Warm Boot, Sleep)及び(4)Performance Evaluationです。結果、SDホスト機器の中でも、デジタルカメラとシステム(例:コンピューター)が一番よく互換性の問題が発生するようです。続いて、スマートフォンとカードリーダーでも互換性問題が発生しました。
分析の結果、互換性に関する殆どの問題は4つのシナリオに分類できることがわかりました。
(1) Plug/Unplug Enumeration
(2) User Behavior (Format, I/O Errors)
(3) Power Management (Cold/Warm Boot, Sleep)
(4) Performance Evaluation
SDホスト機器の互換性問題において一番問題が発生するのが、Enumeration (55%)、2番目はFormat (25%)3番目がI/O error (20%)です。
Enumeration (55%)の互換性問題の比率が一番大きく、ほぼ全てのSDホスト機器に類似の問題が発生しました。これは重要な問題で、最初に解決しなければならない問題の一つです。なぜなら、一旦問題が発生すると、使用できなくなる可能性が高いからです。特にスマートフォン(16%)、デジタルカメラ(15%)、システム(11%)、カードリーダ(11%)にとって、Enumeration (55%)は一番問題が発生しやすく、ホストの状況によっては正常に作動しなくなるトリガーとなります。2番目によく発生する問題はFormat (25%)の操作です。この中でも、システム(13%)はデジタルカメラ(7%) よりも問題がより多く発生しがちです。3番めの問題は、約20%のSDホスト機器にI/O errorの発生です。システムでこのような問題が発生する比率は7%であり、これはデジタルカメラの12%に次いで多い数字です。
Source: Allion Labs, Inc.
頻発しがちな互換性問題の検討
ここでの注目すべき点は、上記の三種類の互換性問題は多くのSDカードとSDホスト機器間で発生していたという点です。たとえば、Enumeration段階でSDカードを検出できなったり、読み取れたとしてもSDカードの容量が間違っていたりしました。Formatではエラーメッセージが表示されたり、時間が長すぎたりしました。端末操作時にI/O Errorが発生すると、録画が中断したり、カメラが使用できなくなったり、写真を読み取れなかったり、データ破損、コピーができない、更にはホストがフリーズしてしまう等の問題が発生しました。これらの主な発生原因は、信号の安定性不良、インピーダンス整合、ソフトウェアのバグといった点にありました。こうした問題に対しては、発生問題の検証を行うことで問題改善へのアプローチをすることができます。
有効な試験方法を確定することで、互換性問題を極力なくし、高品質を確保することが、ハイエンド市場における利益を増加させる鍵になります。アリオンはSD製品の全体品質の向上を目指し、SDカードとSDホスト機器間の機能、そして互換性問題を解決するために、SDAの研究と解決に協力しています。コアメンバーの一員として、アリオンは長年継続的に協会の技術進展の討論に参加し、関連機関標準のマーケテイングと推進活動を支援してきました。また、アリオンはSDAが指定する認証ラボ(Designated Lab)の一つであり、ISO/IEC 17025取得ラボです。SD規格製品の品質上における疑問、技術規格に関する問題やニーズなどについて、コンサルティングサービスを提供しています。サービスの詳細につきましては、当社までお問合せください。