IoTと技術革新によって製品区分の垣根を超えた接続性の多様化が進んだことで、様々なIT製品を駆使した新しいライフスタイルが一般的になりました。例えば、帰宅時の掛け声ひとつで照明やエアコン、テレビなどの電源をONにできるようになるなど、日々の生活はますます便利になりつつあります。しかし、スマートデバイスがより広く利用されるにつれ、開発現場が遭遇する問題が多くなっていることもまた事実です。
この記事では、デバイス間の通信形態が一対一から多数対多数へと変化していることを踏まえ、製品の「クロスクラウド(複数のクラウド環境にまたがる)通信」、「一貫性に欠けるUI(ユーザーインターフェース)設計」、そして「無線信号の干渉」にありがちな問題点について紹介しています。
IoTテクノロジーと公共安全性
IoTテクノロジーは、現代の日常生活において様々な場所で役立てられています。ネットワークを経由して様々な製品(時計や家電、スマートフォンなど)と相互接続し、離れた場所から環境や人に対する識別、監視などを実現しています。また、周辺の状況や公共安全をモニターするために監視カメラや探知機といったスマートデバイス/センサーが至る所に設置されいます。例えば、外部から侵入者が施設内に入ろうとスマートウインドウに手をかけた時に、センサーが作動してセキュリティモードに切り替わり、警報機と監視カメラが起動します。
これまでのセキュリティシステムは、従来だと単に状況をユーザーに発信するだけでした。IoTによって相互に連携したシステム構築が可能となったことで状況に応じた対応ができるため、素早い行動が可能となります。
これらの製品群が実際の環境下で使用された際の信頼性を確認するために、アリオンIoTイノベーションセンター内にあるスマートキャンパス区画には、スマートガス探知機や警報機、施錠システムといった様々な設備を設置しています。そこで、アリオンでこれらの設備について検証を行ったところ、クラウド含めた全体で通信遅延を確認しました。
複数のクラウドにまたがった通信環境で遅延が発生
「There’s Smoke!」(煙だ!)と名付けたシチュエーションモデルでは、煙探知器はスマート照明とユーザーの持つモバイル端末に接続されています。教室内に煙がある時、警報機が作動して避難アナウンスを発し、照明が点滅することで出口がどこにあるのかを示します。また、他のキャンパスや施設内にいる生徒にも避難メッセージが発信されます。このシステムは緊急事態が発生した際に、個人が通知を受信できるように構築されています。以下の図はデータパッケージの通信経路を示したものです。
最初に、煙探知機はWi-Fi経由で「There’s Smoke!」から「クラウド1」にデータパッケージを送信します。そして、「クラウド1」はWi-Fiまたは4Gネットワーク経由で各モバイル端末へと緊急メッセージを送信し、同時に「クラウド2」と通信することでスマート照明をアクティブにします。しかし、我々が試験を行ったところ、クラウド1とクラウド2の間では10秒~40秒の遅延があったことを確認しています。人命が関わっている以上、この遅延期間は深刻な事態を招きかねません。
IoTテクノロジーとスマートリビング
公共安全にIoTが利用される一方で、IoTデバイスは人々の生活をより便利にするためにも活用されています。IoT製品群とそれらを利用するユーザー行動の多様性は、デバイスの機能と性能、そして相互運用性に影響を及ぼす可能性があることから、アリオンIoTイノベーションセンターでは単身者、核家族、拡大家族といった数ある家族形態を考慮し、様々なシチュエーションに対応したシナリオを構築しました。製品が市場にリリースされる前に問題を発見し、解決することを目指しています。
それぞれのシナリオには解決すべき目的があります。例えば、「ハウスシナリオ」では大きな家に住む拡大家族の生活を再現することを目的に構築されています。拡大家族は、各々が異なるスマートデバイスを生活に取り入れていることが多いものですが、様々な種類のシステムやクラウドサービス、スマートハブなどによって制御されるIoTデバイスは、信号の干渉や性能の低下といた問題を引き起こす可能性があります。こうした複雑な環境下でIoTデバイスが適切に動作するかを検証するために、ハウスシナリオでは幾つかのモデルケースを構築しています。
一貫性のないユーザーインターフェース
製品の互換性をより確かなものにするために、製品メーカーは複数のUIを設計し、各OS(iOS, Androidなど)に対応させています。にもかかわらず、それぞれのUIには異なるバグが見られることがあり、それらのバグによってユーザー満足度が低下してしまうことがあります。
上記の図で示す事例は、スマートコントロールハブの3種類のUIを示しています。iOSユーザーの場合、メーカーはアプリを通じて他のデバイスを制御できる「統合アプリ」を設計しています。一方、Androidユーザーの場合は、様々なデバイスを制御するために複数種類のアプリをダウンロードする必要があり、操作が複雑になっています。さらに悪いことに、一部の設定はレガシーコントロールでしか操作できません。つまり、すべての機能を有効化するためには、スマートコントロールハブにキーボードとマウスを接続する必要があります。この事例の場合は様々なUIをサポートはしていますが、一貫性のないUI設計によってユーザー満足度が低下する可能性を示唆しています。
無線信号干渉の問題
IoTシステムは、無線技術によって運用されることでより複雑なエコシステムを構築しています。しかし、これらの信号(Wi-Fi, Bluetooth, Zigbee, Threadなど)が同じ屋根の下に共存すると、同一チャンネルの干渉や隣接チャンネルへの干渉を引き起こすことがあります。
例えば、あるスマートアシスタントだと音声認識で空気清浄機を作動させられませんでした。当初は、これもクロスクラウド環境下での通信が問題となっていると思われました。しかし後になって無線信号のヒートマップレポートを分析したことで、これが無線AP間の同一チャンネル干渉問題であることが判明しました。ヒートマップレポートによって、スマートデバイスの接続性と性能を検証するRSSI(Received Signal Strength Indicator)を把握し、様々な無線信号を視覚的に素早く理解できるようになります。
アリオンIoTイノベーションセンターのRSSI Rate
上記(右図)のように、施設内の強いRSSIレートが引き金となってスマートアシスタントの性能を低下させています。この問題は、APの分布を変更することで解決しました(左図)。
結論 – IoTイノベーションセンター
アリオンのIoTイノベーションセンターは、お客様が市場に製品を販売する前に問題を発見し、解決することを目的として作られました。5種類のユーザーシナリオ(単身、家族、学校生活など)で、それぞれモデルケースを構築しています。将来的には、製品が干渉を受けやすいかどうかを検証するために、様々な信号干渉源を提供するなど、より多くの検証サービスを導入していく予定です。検証の専門家チームが、お客様が開発する製品のニーズに最適なソリューションを提供致します。
お問い合わせ | |
(受付時間 平日9:00~18:00) |
Webフォーム |