ゲーム用ノートPCの性能向上に伴い、ゲーム中に発生するPCの排熱とファン音による騒音の対策が大きな課題となっています。機体の温度が上昇すると、熱を下げるためにファンが高速で回転し、そこから発する騒音がユーザーを不快な気分にさせることがあるからです。アリオンの測定チームは、某メーカーから発売されているゲーム用ノートPCの中から、17.3インチの機種「A1」と15.6インチの機種「A2」の2台をピックアップし、比較試験を実施しました。実施した比較試験項目は以下の2つです。
1. ノイズ試験
2. スピーカー出力試験
なお、ノイズ試験ではキーボードのタイピングノイズとシステムが発するノイズの2つの側面から評価を実施しました。
タイピングノイズ(Keyboard Typing Noise)
タイピングノイズ試験では、PCに電源に接続されていない状況で、一秒間に3回タイプした場合の音量データを取得しました。タイピングノイズの音量については、文字キーのタイプ時には最大55dB、エンターキーやスペースキーといったファンクションキーのタイプ時には最大60dBを超えないものとすることを基準としています。下図(図1)は実施環境の見取り図です。無響室内に75cmのデスクを配置し、その上に試験対象のPCを設置しました。そのPCのキーボードから5cm離した場所にマイクを設置し、ノイズを取得しました。
下記(表1)はノイズ試験の結果です。どの程度のノイズが発生したか、キー毎の計測結果を記載しました。これを見ると、A1とA2のすべてのキーが基準値を下回っていることが分かります。
Note: Background sound (2nd pre-test): 22.488 dB SPL
システムノイズ(System Noise)
システムノイズ試験では、機種A1の通常稼働時とローディング時のノイズをそれぞれ計測しました。通常稼働時のノイズ試験を行う前に、A1を一時間放置し、なおかつWi-FiとBluetooth機能をオフにしています。A1とマイクの配置は図2のとおりです。
ノートPCがローディング時に生じるノイズの取得は、3DMark6、Furmark、Prime95という三種類のソフトウェアで実施しました。機種A1では、FurmarkとPrime95を稼働させた時点でCPUとGPUの稼働率がそれぞれ100%となり、最も大きなノイズを発しました。
スピーカー出力試験(Speaker Output Characteristic Test)
スピーカー出力試験は、スピーカー最大出力時の音の歪みを測定する試験です。従来の音と、システムのコーデック及びサウンドカードを通して出力された音との出力比較をパーセンテージで表記します。この試験を実施する前に、作業システム上の音響効果はすべてOFFにし、機種A1の内蔵スピーカー音量を最大にしています。
測定方法は、1kHzの0dB音声を30秒間流し続け、それをオーディオ機器APx585で測定しました。機種A1が1kHz音声を出力する際、内蔵スピーカーの出力の歪みが1%以下に留まることを測定基準としています。
測定の結果、出力シグナルの歪みが従来と比較して2.28%と基準値よりも高い値となりました。これにより、出力シグナルを抑えることによってノイズ拡大の可能性を軽減でき、より高い品質の製品をユーザーへと届けることができることが分かりました。
まとめ
音響関連の測定ニーズが高いことから、アリオンはIEC-60268とISO7779、3GPP TS26 132(ISO3744/3745)にそれぞれ適合した無響室を作成しました。数々のオーディオ機器や高感度マイク、騒音測定器を常備しており、家電、オーディオ、材質等のノイズ分析や音響性能試験を実施可能です。無響室の広さは対角線の長さが5mで、半無響室へと改装することが可能な作りとなっています。
· 音響性能(Elec-Acoustic):周波数応答、歪み測定、信号対雑音比(SN比)…等
· ノイズ(Acoustic Noise):ファンノイズ、振動騒音…等
· 音圧(Sound Pressure Level):最大音圧、敏感度…等
試験実施の専門家集団であるアリオンでは、お客様に最適な検証サービスを提供するため、中部サイエンスパーク内に設立したCTSPラボ内に13室の電波暗室を設置しました。ここではWi-FiやBluetoothといった専門性の高い無線試験を提供しているほか、無線輻輳試験やパフォーマンス測定といった試験を実施しています。本稿で紹介したノイズ測定の他、各種ロゴ認証試験や無線検証につきましては、営業窓口までお気軽にお問合せ下さい。