情報量の爆発的な増加に直面している現代において人々は情報を求め続けており、データ転送やデータ共有、保存技術もそれに伴って高まってきました。多くの企業がこのトレンドに狙いを定め、発展著しいクラウド技術の波に乗っています。企業はこの新しい「クラウドストレージサービス」(Cloud Storage Service)を次々と打ち出し、クラウド市場という新たに登場した巨大なパイの奪い合いをしているのです。これまで主流だったハードディスクとUSBメモリーに頼ったデータ保存だけでは既に時代遅れであると言えるでしょう。クラウドストレージは、携帯電話、タブレット端末、パソコン及びスマートテレビのように、現代社会に生きる人々の生活の中で最もよく使われるIT技術となりつつあります。そして、その利用シーンとデータ転送技術の全てを一つに融合することで、双方のシームレスなアクセスを可能としているのです。
市場に溢れるさまざまなクラウドストレージの中で、一体どのサービスがどんなニーズに対応しているのでしょうか?機能、パフォーマンス、互換性及びユーザビリティを兼ね備えた革新的なサービスを提供できるクラウドベースのアプリケーションは、新たな問題や困難な課題と、ソフトウェア検証やユーザエクスペリエンス検証のニーズをもたらしています。
アリオンは利用者全員のユーザビリティを満たすクラウドストレージこそが、市場において有効な価値を築くことができると考えています。検証にあたり、市場で代表的な6つのクラウドストレージを選定しました。本稿ではこれらのサービスの比較分析と評価を行っていきます。
注)仕向け国により各社のサービス内容が異なる場合がございますので、日本国内のサービスと若干異なる場合がございます。予めご了承下さい。
クラウドストレージサービスの比較分析
6つのクラウドストレージは、現段階では基本的に全てのサービスを無料で利用可能であり、一部有料で保存容量を増加するなどのサービスを提供しています。無料で利用可能な容量が増えるにつれて、市場競争力は高まるかもしれません。しかし実際の利用シーンに基づいて観察を試みると必ずしもそうとは言えず、ユーザは各々が持つ個人用機器との互換性があるかどうかを重要視しているのが実情だと分かります。つまり、クラウドストレージを利用する場合、データ転送と保存容量だけでは機能とユーザビリティの本領を発揮できるものではないということです。本レポートでは、無料で利用可能なデータ容量に関する検証を除外し、利用状況に沿った検証を中核として、各クラウドストレージのインターフェース、ユーザビリティ、機能性、互換性などについて評価を行うことにしました。
A) インターフェースデザイン(Interface Design)
B) アップロードデザイン(Upload Design)
C) ブラウザ別機能対応(Browser Support)
D) オンラインファイルプレビュー機能(File On-line Preview Support)
E) ファイル共有機能(File Share Support)
F) オンラインOfficeファイル編集機能(Office Files On-line Edit)
G) 他のウェブ機能のサポート(Misc. Function Support on Web)
H) モバイルプラットフォームサポート(Mobile Platform Support)
1. インターフェースデザイン(Interface Design)
◆想定した利用シーン
ユーザがインターフェースデザインを見て、素早く機能を把握できるか、また、どのように関連機能の操作を行うのかを確認する。
◆検証結果
① Google Drive、SugarSync及びDropboxインターフェースは単に機能を画像表示するに過ぎず、マウスカーソルを画像まで移動しなければ機能を示す文字が現れてこない。ユーザがマウスを使わない場合、またはタッチパネル端末を利用する場合は、直感的には画像が何を意味するのか理解できない可能性が高い。
② Asus WebStorageとMS OneDriveは共に文字と画像を並列表示しているので、ユーザにとっては直感的に使用できるようになっている。更に、MS OneDriveは図形デザインが最も鮮明であり、タッチパネルを利用するユーザなら気軽にタップできる。
③ 全体的に見れば、Asus WebStorageのインターフェースデザインは比較的シンプルである。文字と画像で情報を提供しているが、インターフェースの美しさは他のクラウドストレージには及ばない。
2. アップロードデザイン(Upload Design)
◆想定した利用シーン
ファイルアップロード時の操作を理解しやすく、使いやすく、かつ直感的で明確かどうかを確認する。
◆検証結果
① NortonOnline Backupはファイルアップロード機能をサポートしていない。
② Asus WebStorageとSugarSyncはアップロード時のドラッグエリアが小さい。しかし、ユーザの利用状況にはそれほどの影響はない。
③ Asus Webstorageのアップロード機能は、ドラッグ&ドロップによるアップロード方式とファイル選択型のアップロード方式の2種類に分かれる。だが、インターフェース上ではドラッグ方法だとはっきりと説明していないため、ユーザはドラッグ機能があることを認識できない可能性がある。
④ Asus Webstorageは同期しているフォルダのみを対象として、PCアプリを利用することでファイルのバックアップをサポートする。他のストレージはフォルダ同期機能しかサポートしない。
3. ブラウザ別機能対応(Browser Support)
◆想定した利用シーン
さまざまなウェブブラウザを通じてウェブ版クラウドストレージを利用し、対応状況を確認する。
◆検証結果
6つのクラウドストレージは全て、現在主流となっているウェブブラウザをサポートしている。Google DriveとMS OneDriveはSafari(Win)をサポートするとは言明していないものの、実測の結果では大半の機能が正常に利用できることが分かった。
4. オンラインファイルプレビュー機能(File On-line Preview Support)
◆想定した利用シーン
ファイルをダウンロードすることなく、ウェブ上でリアルタイムで文書をプレビューする。
◆検証結果
① Google DriveとAsus WebStorageのオンラインファイルプレビュー機能は高い互換性を持っており、画像、音楽、映像、Office文書、PDFファイルをサポートする。
② MS OneDriveは画像、Office文書、PDFファイルのプレビューをサポートする。
③ SugarSyncは、画像プレビューのみをサポートする。
④ 着目すべきは、Google DriveだけがGoogleDoc形式ファイルをサポートしている点である。
5. ファイル共有機能(File Share Support)
◆想定した利用シーン
ファイルをメールボックスまたはソーシャルメディアなど他の第三者サービスで共有する。
◆検証結果
① 6つのクラウドストレージは、基本的にユーザがファイルを簡単に共有できるような機能を備えている。しかし、Asus WebStorageとNortonOnline BackupではFacebookとTwitterにファイル共有できないことが分かった。
② Google Driveの共有機能が最も多様なサービスに対応している。
6. オンラインOfficeファイル編集機能(Office Files On-line Edit)
◆想定した利用シーン
ファイルをダウンロードすることなく、オンライン上でリアルタイムにOffice文書を編集する。
◆検証結果
Google DriveとMS OneDriveだけがこのオンライン編集機能をサポートしている。Office文書の利用率の高さから見てユーザの利便性が大幅に高まる。
7. 他のウェブ機能サポート(Misc. Function Support on Web)
◆想定した利用シーン
ユーザが実行する可能性がある他の機能、例えばマウスの右クリック、バックグラウンドでのアップロード、ファイルの自動修復、タッチパネル、他社製のアプリ等に対応しているかを確認。
◆検証結果
① Google Drive、Dropbox、MS OneDriveはマウスの右クリックに対応する。タッチパネルでは特定の機能ボタンを長押しすると機能リストが現れる。Asus WebStorage、SugarSync、NortonOnline Backupはこれらの機能に対応していない。Google Drive、Dropbox、MS OneDriveはタッチパネルを利用するユーザでも自分が実行したい機能を見つけやすくなっている。
② Asus WebStorageとSugarSyncはバックグラウンドでファイルをアップロードすることができず、ユーザは現在のタスクが完了しなければ他の作業が行えない。
③ Dropboxは単純にクラウドストレージ機能を提供するだけではなく、他にも多くの機能を総合的にサポートしている。楽曲リスト、ウェブサーバ、メールボックス機能などを使用できる。
④ 6つのクラウドストレージはウェブ版においては全てファイル修復機能をサポートする。
⑤ Google DriveとAsus WebStorageだけがZIPファイル形式のダウンロード機能をサポートする。
8. モバイルプラットフォームサポート(Mobile Platform Support)
◆想定した利用シーン
クラウドストレージも、大半がモバイル用アプリを提供しているが、この互換性と機能性もウェブ版と同じく便利で使い易いかを確認した。Android、iOS、Windows Phoneの3つの携帯端末向けOSを選定し、特定の項目について検証を行った。
◆検証結果
① AndroidはオープンソースOSなので、ユーザは基本的にファイル管理システムによってデータのダウンロード/アップロードができる。
② MicrosoftとAppleのOSでは、ユーザは写真のアップロードと注釈の修正しかできない。
③ Google Drive、Dropbox、SugarSyncは、Windows Phoneに対しては公式アプリを提供していない。利用したい場合、ユーザはサードパーティアプリをインストールすることでGoogle DriveとDropboxを利用することができる。
各プラットフォームの携帯端末を対象としたクラウドストレージについて、主な対応状況を整理した。プラットフォームの互換性、ウェブ版との同時処理、ユーザビリティについてのいくつか問題点を提示している。詳細な検証項目と結果については表10、表11、表12を参照。
アリオン、クラウド検証プランを本格開始!グローバルな品質向上をサポート
以上が今回実施した検証結果です。本レポートでは、冒頭で実際の利用シーンに基づいた状況を主な検証範囲と設定しました。これに沿って検証を試みると各クラウドストレージで機能性、パフォーマンス性、ユーザビリティが全く異なることが判明しました。クラウドストレージが既に一般ユーザの日常生活と密接に関わっている事実からすれば、PCと携帯端末、どちらから利用しているかにかかわらず、機能性、パフォーマンス性、安定性、ユーザエクスペリエンスなど多角的な面で専門的な評価と改善行動を行う必要が出てきます。
世界中がクラウド技術とアプリケーション開発に人と物資を大量に投入しており、Googleもアジア太平洋地域最大のクラウドセンターを作るために台湾への投資を拡大させています。多くのメーカーがこのトレンドに追随していますが、それに伴って技術開発、品質保証、マーケティング面で困難な状況に直面しています。クラウドストレージを例に取ると、サービス提供各社は市場で販売する前にハードウェア製品を購入することによってソフトウェア開発とストレージ対応を確認していますが、専門会社による互換性評価やユーザエクスペリエンス評価は行われていないのが実情です。そのため、結果的にソフトとハード面の互換性が弱くなり、パフォーマンスや信頼性が低下する、不都合なインターフェースとなるなどの問題が発生することになります。
アリオンではこれらのクラウドサービス及びソフトウェア・ハードウェアの統合試験を行う際には、その重要度にかかわらず全てテストケースとテストプランを作成します。そして、クラウドストレージに関してお客様一人ひとりに適した検証ソリューションを提供するため、あらゆる利用シーンにおける厳格な審査体制を整えており、新しいクラウドシステムの製品面、サービス面の両方から品質を確認します。グローバルにサービスを展開している会社が提供しているサービスを比較し競合分析を行うことによって、クラウド産業全体に更なる技術革新をもたらすことができるよう、アリオンはその可能性を探ります。
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