家庭用ゲーム業界の目まぐるしい発展は、ハードウェアと周辺機器の進化に影響を及ぼしています。注目を集めているのがゲーミングモニター市場の成長です。Trend Forceの傘下にあるWitsViewが発表したレポートによると、2017年のゲーミングモニター出荷量は約250万台で、年間成長率は80%にも及ぶそうです。また、2018年は前年より120万台増の370万台となることが予想されています。急速に成長しているゲーム市場において、モニター品質はユーザーから重要な要素の一つとして見られています。一方、ゲーミングPCのユーザーが常にハイスペックな製品を求めている傾向にあることは、開発者たちにとって決して無視できないポテンシャルリスクとなっています。
USB Type-Cはゲーム機器でも幅広く利用されており、USB Type-C技術を搭載したデバイスは今後ゲーム機器におけるスタンダードになると見られています。従来は映像や給電に複数のインターフェースが必要でしたが、USB Type-Cだと一つの接続ポートで給電(PD)と映像・音声出力を同時に実現できるようになります。当然、機能が便利になればなるほど、その裏側で動いている技術は複雑であることが伺えます。ここでは、アリオンが実際に測定したことで判明した、USB Type-C対応モニターによくある五つの問題点を紹介します。
モニターの抱えるポテンシャルリスク
モニターとして最低限の機能とは、画面が問題なく表示されることです。しかし、市販モニターであっても一部メーカーの製品では使用中のブラックアウトやプラグアンドプレイの不具合、最大解像度への切り替えができない、といった画面表示に関する不具合が発生することがしばしばあります。ユーザーがゲームを楽しもうとしている最中にこんな不具合が発生してしまったとしたら、メーカーに対してどんな気持ちが芽生えるでしょう。ユーザーエクスペリエンスやユーザー満足度だけではなく、ブランドそのものにもダメージを与えることになりかねません。
1. モニター接続時にブラックアウト
アリオンで試験を行った結果、ブラックアウト問題が発生したモニターは全体のおよそ2割に及びました。代表的な事例は次のとおりです。
- USB Type-C経由でモニターとデバイスを接続したとき、モニターがブラックアウトする
- デバイスをスリープモードから復帰させた際、モニターの電源ランプが点灯していても画面は黒いままで表示されない
このような問題が頻発するとなると、ユーザークレームが絶えないことでしょう。しかし、このようなクレームを受けても問題原因を特定できない場合があります。それは、モニター側に問題があるのではなく、モニターとUSB Type-Cの互換性が問題点になっている場合です。
2. プラグアンドプレイ時にエラーメッセージ
プラグアンドプレイ(Plug and Play, PnP)とは、ドライバー等がインストールされていない状態でもモニターを正常に認識、画面表示できる技術です。よくある問題として、モニター接続時にPnP対応モニターとして認識されないことです。その結果、画面の解像度が調整できない、正しい比率で表示されない、などがあります。また、USB Type-CのBillboardメッセージがユーザーを混乱させることもあります。メーカーが問題を特定する際、デバイスとモニター間の互換性問題を優先的に考えるのが一般的ですが、USB Type-Cによる接続問題は見落とされがちです。
3. 最大解像度に切り替わらない
モニターとデバイスを接続したときには、自動的に最適解像度に切り替わるはずです。しかし、市場にある多くのモニターでは接続後に最適な解像度へと切り替わりませんでした。解像度はゲームの画面表示に大きく影響しています。低解像度状態ではゲームの画質が悪くなるためユーザーのやる気を削ぎ、この問題が発生するメーカー製品の利用を避けることになるでしょう。
USB PD技術が普及 モニターの給電は慎重に検証すべき
USB Type-Cでは給電能力の向上が図られており、モニターからデバイスへの給電も可能になりました。ただし、認証試験を通っていないモニターだと正常に動作できない恐れがあり、モニターの焼損やその他の予測できない安全性問題等の懸念があります。過去にアリオンで行った結果から、モニター給電の事例を二点紹介します。USB Type-C給電の検証試験を実施することで、製品使用時の安全性を確保できるほか、公共の安全性を守ることもできるでしょう。
1. Type-Cからデバイスを充電できない
モニターにUSB Type-Cインターフェースが搭載されている場合、充電器を使用することなくスマホやイヤホン等のデバイスへと大容量給電できます。ただし、ユーザー観点では以下の問題が起こりがちだと考えられています。
- デバイスが電池切れ(dead battery)時に充電できない
- モニターがスリープモードやその他のモードから復帰した際、デバイスへの給電ができない
2. デバイス/モニターの焼損問題
デバイス/モニターの焼損問題は、USB Type A to Cコネクタでよく見られる問題で、旧仕様のコネクタでは滅多に見られることはありませんでした。これは、USB Type A to Cコネクタでは品質の差やインピーダンスの違いによって発生するからです。デバイス接続後の無反応や焼損の発生率も高くなっています。
おわりに
現在、家庭用ゲーム産業がどんどん広がっています。この成長市場で欠かせない役割を果たしているのがモニターです。サプライチェーン全体の試験経験を持つアリオンは、ゲーミングモニターや関連アプリケーションに対し、システム、ビデオカード、モニターメーカーから、Docking、Dongle、さらにはKVMスイッチに至るまで、メーカーのニーズに合わせた最適な試験プランをご用意いたします。製品の機能と性能をきちんと確保することで、ユーザーエクスペリエンスや企業ブランドの信頼性向上など、様々なメリットが得られることでしょう。