音声認識は、遠隔操作を行うための方法として、もはや一般的に普及した技術となりました。アマゾン、グーグル、アップルといったITジャイアントたちは、音声認識システムを自前で開発し始め「スマートアシスタント」として市場に持ち込みました。
一般的に、スマートアシスタントは音楽やラジオ放送などエンタメ関連サービスや情報検索(天気、翻訳、レシピなど)などに使われたり、家の中にあるスマートデバイスの操作や管理などで使われたりしています。この”スマート”なアシスタントは、IoT時代を更に推し進めようと試みるメーカー群から熱い視線を浴びています。
例えば、2014年にはAmazonがAlexaを発表、2016年にはGoogleが開発者向け会議「Google I/O」でGoogle Homeを正式に発表しました。そして2017年にはLINEがAIアシスタント「Clova(クローバ)」を発表しています。一方で中国市場では、2016年にJindongのスマートアシスタントであるDingdongが、2017年にはXiaomiとAlibabaがそれぞれXiaoAiとTmall Ganiというサービスを立ち上げました。2018年現在、スマートアシスタント市場はまさに戦国時代と言った様相を呈しています。
優れた機能を持っていると、一方で複雑な検証が必要です。アリオンの様々な試験経験に基づくエキスパートは、スマートアシスタントに起こりがちな一般的課題について、「認識の失敗」、「解釈の間違い」、そして「無線信号の干渉」という3つに分類しました。また、市場にある様々なスマートアシスタントに関する問題を検証するべく、いくつかのトライアルケースを準備しました。今回のブログでは、スマートデバイスが提供するユーザーエクスペリエンスは、製品そのものだけではなく、様々なアプリケーションとも関連する点について記述しています。
スマートアシスタントアプリで見られがちな問題とは
通常、人は初めて部屋に入るとき、照明やエアコンのスイッチの場所を把握する時間が必要です。スマートアシスタントをこうした家電製品の「コントロールハブ」として機能させることで、人々はすぐに照明やTVの電源をつけたり、音声認識でチャンネルを変更できるようになったりします。しかし、音声認識が誤った言葉を拾ったり、会話を誤解したりする可能性があるため、誤った指示となることがよくありました。
あるトライアルケースで、音声アシスタントに「3分後に空気清浄機をOFFにする」ように指示しました。にもかかわらず、音声アシスタントは「3分」というキーワードを拾うことができず、即座に空気清浄機をOFFにしてしまいました。我々が繰り返し試験を行ったところ、製品仕様に定義された文章や単語であっても、認識できない(誤認)といった問題が発生することが多く見られました。これらの問題はユーザー満足度の低下に直結していることが考えられます。
2. 音声を聞き取れない問題
誤認問題の他にも、スマートアシスタントの音声認識能力は、周辺の騒音レベルやユーザーとスピーカーとの距離などの要因によって大きく影響を受けます。具体的には、30dBと50dBの騒音レベル下で試験を行った際、スリープ状態からの復帰率にばらつきがあることが分かりました。また、ユーザーとスピーカーとの間の距離が5メートルを超えると、一部のスマートアシスタントは復帰しづらいことも分かりました。スマートアシスタントを取り巻く環境は複雑であるため、音声認識能力を検証する際は環境要因からの影響が指標の一つとなります。
3. 無線信号の干渉問題
雑音や距離といった環境的要因に加えて、当たりに飛び交う目に見えない無線信号もまたスマートアシスタントの性能に悪影響を及ぼす可能性があります。ほとんどのIoTデバイスは2.4GHz帯域を使った無線技術(Wi-Fi、Bluetooth、ZigBeeなど)を使用しているため、混線した無線が発生する可能性があります。
トライアルケースでは、すべてのデバイスで全アンテナが立っている状態だったにもかかわらず、2.4GHz帯域を用いた複数のワイヤレス信号の応答時間が増加する傾向にありました。なお、混線したエリアから脱出すると、製品は正常に動作します。
スマートアシスタントのための試験ソリューション
1. 製品検証
「製品検証」では、スマートアシスタントの基本機能、相互運用性、音響性能に対する検証を提供しています。製品の主要機能、UI、復帰率などを含む機能試験の実施に加え、製品検証のエキスパートが我々の保有する数々のAPや携帯電話との相互接続性試験を実施します。
アリオンで実施する機能試験の一部
Allion’s Device Library
スマートアシスタントの音響パフォーマンスを向上させるために、アリオンのエキスパートは顧客ニーズに応じたカスタマイズプランを構築しています。市場における製品の立場に基づき、方位、角度、距離、ノイズレベル(dB)等の重要な要因を設定し、アリオンの優れた試験設備でデバイス試験を行うことが可能です。
2. ユーザーシナリオシミュレーション
前文に述べたとおり、スマートアシスタントの活用範囲の拡大に伴い、コンシューマー向けの検証が複雑になっています。アリオンの検証では、様々なシナリオを作成し、製品との互換性問題の発見をお手伝いします。
「家庭内」のシナリオでは、リビングルームやバスルーム、キッチンなど、一般庭をモデルとして構築しており、子供の叫び声、料理をする音、輻輳環境といった様々な状況をシミュレート可能です。たとえ被試験用機器が機能試験に合格したとしても、パフォーマンスに関して予想外の問題が出現することが考えられるため、個別のIoT製品に最適な検証プランをカスタマイズして提供する必要があります。以下の図は、アリオンが構築するシナリオの一部を表しています。
様々なシナリオにおける無線通信状態の検証を求められていることから、アリオンは信号ヒートマップ解析によって、特定エリアの無線信号を可視化できます。ヒートマップで受信信号強度(RSSI)を示すことで、スマートデバイスの無線接続(例:Wi-Fi, Bluetooth, Zigbeeなど)性能と信号強度など、通信時の問題点を具体的に把握できます。
*ヒートマップ検証についてはこちらの記事をご参照ください:現実社会にある要因でスマートデバイスを検証しよう
結論
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