スマートウォッチ市場動向：市場の主流商品となるか？

ウェアラブル市場は、最近のIT技術分野で最も話題を集める製品分野となりました。これらの機器群はますます使い勝手が良くなっており、以前はスマートフォンやタブレットといった、モバイル機器でしか利用できなかったようなメッセージ機能やビデオ通話といった様々な機能が追加されています。今回アリオンでは、ウェアラブル市場におけるスマートウォッチの動向を観察し、IT機器市場における主力製品となり得るかどうかを検討しました。

2015年、ウェアラブル市場の注目株 －スマートウォッチ

市場調査機関であるIC Insightsは、ウェアラブル端末の成長力について、モノのインターネット（IoT）の市場とその他関連分野（コネクテッド・カー、スマートホーム、産業インターネット、スマートシティ）と比較して増加が著しいことを指摘しています。IoT全体の市場規模は2015年には642億米ドルに達することが予測されており、成長率は前年度比で約29％です。その中でウェアラブルシステムについては、2015年で61億米ドル、成長率は約455％にも達する見込みとなっています。

IoT市場の各営業収入予測 (市場調査機関IC Insightsから引用)

IC Insightsがウェアラブルデバイスの潜在成長力を大きく評価している要因は、2015年4月に発表されたAppleの初のスマートウォッチ製品であるApple Watchにあります。Apple Watchの発表は、ウェアラブルデバイスに関連する半導体コンポーネント（IC、センサーなど）の出荷量と販売額の短期間による大きな成長につながりました。しかし、スマートウォッチの成長動向については異論もあります。このような種類の製品が、デバイス市場の主流製品になれるかどうか、あるいはすぐさま消えてしまうニッチ製品なのか、まだまだ観察が必要です。

大手企業によるスマートウォッチの推進 市場価値が急上昇

Apple Watchが2015年4月中旬に販売開始されて以来、スマートウォッチ市場は大幅に成長しています。しかし、成長利益の大半はAppleが抑えている状況です。市場調査会社Strategy Analyticsの報告から予測すると、Apple Watchはブランド力、革新的な機能、外観、質感、そしてiPhone6のヒットといった要因により、2015年第二四半期の出荷量は400万台にも達し、世界中のスマート型ウォッチ市場の売上の約75％を占めています。反面、Samsungは約40万台とAppleの1/10の出荷量しかないものの、売上としてはAppleに次いで2位となっています。

2014年と2015年 第二四半期 スマートウォッチの出荷量 (Strategy Analytics公式サイトより)

Apple Watch (APPLE公式より)

現在販売展開されているApple Watchは38mmと42mmの二種類のサイズがあります。また、Apple Watch Sport、Apple Watch、Apple Watch Editionの3タイプがあります。時計のケースとベルトの種類によって、54通りの組み合わせが可能です。

現時点でApple Watchと対抗できるブランドは、Samsungの最新製品であるOrbis S1とOrbis S2、Orbis Classicという三種類の「Gear A」でしょう。Apple Watch SportとEditionに対抗するためにそれぞれの製品が発表されたと予想されています。報道発表によると、SamsungはAppleを真似て、同じ機種で多面的な策略を採用すると考えられています。

Samsung 次世代型スマートウォッチ – 「Gear A」(Samsung公式サイトより)

Gear AはSamsung主導により開発されたTizen OSを採用しており、Exynos3472デュアルコアプロセッサ、Bluetooth、心拍数センサー、Wi-Fi, NFC, ジャイロスコープ及びGPSチップ等を搭載しています。数多くの機能の中で最も喧伝されているのがGPS機能です。GPS機能を搭載することによって、スマートウォッチは携帯電話と連携せずにユーザーの位置を正確に追跡することができます。Apple WatchはiPhoneと連携しなければならないため、これと比較してマップを起動する速度が比較的早くなっています。

Samsung 次世代型スマートウォッチ – 「Gear A」(Samsung公式サイトより)

ユーザーのニーズを満たす”キラーアプリ”の存在

現在のスマートウォッチは、Bluetoothなどを介したスマートフォンとの連携によってすべての機能を利用することができるようになっています。例えば、ネットワーク接続やメッセージ確認、地図の確認などです。しかしながら、スマートウォッチの互換性については限定的な製品が多く、例を挙げるとSamsung製のスマートウォッチはSamsung製のスマートフォンと一緒に利用する必要があるし、これはApple Watchについても同様です。このため、スマートウォッチはスマートフォンの連携製品であると考える人もいます。また、多くのリサーチ会社は、スマートウォッチをスマートフォンの周辺機器として定義しています。

今後スマートウォッチが新たな人気商品になれるかどうかは、製品とサービスの優劣に関係します。もちろん、ユーザーの問題を解決し、ニーズを満足できるかにもよります。アリオンでは、2013年に各社が販売するスマートウォッチの評価報告を発表しました（参考リンク：新ガジェット、スマートウォッチの時代到来へ）。当時、市場にある三種類のスマートウォッチを用いて、客観的な角度から、製品の外観、ユーザーインターフェース、機能性の三大テーマーに基づいて分析を行いました。報告書で記したユーザーが購入するときに考慮する4つのポイントは、デザイン、価格、機能性と電池性能です。更に、4つのポイントに加え、アリオンではユーザーにとって魅力的なキラーアプリの存在が主流商品となり得るかに大きく関わると考えています。

製品設計

業界紙VentureBeatは、Apple Watchは発売日に100万個の注文が殺到し、これは2014年中に販売されたAndroid Wear搭載スマートウォッチの販売総数を超えるものであると記しています。Androidスマートウォッチの発表はApple Watchより早いものでしたが、デザイン面ではApple Watchの方がユーザーに好まれているのが分ります。

価格

Apple Watchの価格は、価格が低い製品でも40,000円以上します。これはAndroidスマートウォッチと比較すると約二倍もします。Androidスマートウォッチはこのギャップを利用して価格に敏感な消費者を取り込むことができることでしょう。

機能性

Apple WatchはAndroidスマートウォッチが本来備えていた機能を更に強固なものとし、インターフェースもより面白く、よりユーザーフレンドリーな設計となっています。また、iOSとの連携が特徴的な点についても、Apple Watchが市場で好まれている主要因です。

電池性能

DIGITIMESの報道によれば、Google及びSamsungのスマートウォッチ製品はOSを搭載することで、連続利用時間が一週間を超えることはないようです。スマートウォッチが市場から受け入れられるためには、最低でもPebbleのように一週間以上稼働し続けることが求められます。現在のApple Watchは、これを満たすためにあと1年～2年程の時間が必要だと考えられています。

汎用性の高さ

多くの人々が腕時計に求めていたニーズをスマートフォンが実現していることから、腕時計を装着するニーズを喚起するために多くの説得力が必要です。スマートウォッチは、スマートフォンの周辺機器として利用されるだけでは購入には繋がらないため、ニーズを喚起する要因が必要となります。この要因とは、スマートウォッチのソフトウェアプラットフォームであり、開発者はヘルスケア、衛生管理、スポーツ、フィットネス分野の方面においてスマートウォッチの利用方法を創造することができます。

汎用性の高さとはパーソナル・アシスタントの存在やモバイル決済システムであると考える人もいますが、ヘルスモニタリング機能も一つのキーファクターとなりえるかもしれません。多くのユーザーはウェアラブルデバイスによる健康・スポーツ面の利用方法の発展を求めており、その次に求められているのが仕事と娯楽です。

スマートウォッチの品質改善

一般的に、コンシューマー市場向けの製品で成功のカギを握るのは、技術的なスペックの高さではなく、全体的な設計品質の高さです。製品に触れたユーザーが熱意を持って家族や友人たちに製品を”売り込む”ことが有効な手段です。Apple Watchの場合、多くのファンが我先にと製品売り場に押しかけた結果、これまでのどのスマートウォッチ製品よりも多く売り上げることができました。Apple Watchの成功は、人々が製品品質のために高価な値段であっても支払うという前提で組み立てられています。したがって、他のメーカーが製品の成功を望むなら、良質なデザインとエンジニアリングによってブランドを保護するようにする必要があることでしょう。

一般的なスマートウォッチにはセンサー、CPU、電池、無線トランスミッターそしてディスプレイが備えられています。無線トランスミッターは製品のデータ通信速度を決定する重要要因です。ディスプレイサイズと品質はユーザーにとって重要ですし、タッチ方式のディスプレイはバラエティ豊かなUIをもたらします。この結果、製品品質に最もインパクトがあるコンポーネンツとして、無線トランスミッターとディスプレイが設計面で重視すべき要点となります。

スマートウォッチとスマートフォン間の通信については、現在はほとんどがBluetooth機能で接続されています。消費電力を抑えるために、Bluetooth Low Energyを通じて携帯電話とのデータ転送と認証を行います。この場合、一般のBluetoothの1/100まで消費電力を削減することができます。Bluetooth技術は現在のウェアラブル機器に欠かすことのできない無線通信技術となっています。

アリオンは、Bluetooth SIG から認定された BQTF（Bluetooth Qualification Test Facility）として、製品の規格への適合を保証するための総合的なBluetoothロゴ認証サービスを提供しています。また、Bluetoothロゴ認証試験だけではなく、 Bluetooth SIG から認定を受けたBluetooth技術のエキスパートである BQE（Bluetooth Qualification Expert）が、確かな技術知識と専門知識によるコンサルティングサポートも行っています。

また、ソフトウェアのシステムとUI設計が複雑になっている昨今において、アリオンではシナリオに基づいたユーザー行動の検証、問題の原因追究、デバッグサポートを含めたソフトウェア検証、およびユーザーエクスペリエンス最適化検証を提供しています。アリオンのソフトウェア開発ソリューションは、お客様の製品開発の効率化を進めます。