写真撮影は、スマートフォンの必須機能であり、カメラの性能は毎年向上しています。高い画素数と豊富な機能のカメラが搭載されたスマートフォンは消費者の購買意欲を掻き立てます。今回は、好評だった前回の「スマートフォンのユーザー・エクスペリエンス最適化検証―ディスプレイ編」に続いて、カメラ機能の試験についてお伝えします。カメラ機能に対し、「Competitive Analysis(CA)」、「User Experience(UX)」という二つの分析側面から試験を実施しました。

Camera Performance CA

試験項目

1

1. Sharpness Test (SFR Plus/ MTF30) – Middle

SFR Plus standard chartにより光学データ分析を行います。評価の基準としては公正で客観性の高いMTFを用いて、レンズの解像レベルを比較しました。

また、標準画像テストによりレンズの解像レベルを定量化してデータ分析するため、アリオンではMTFの30%(MTF30, Cy/Pixel)を評価基準として、それぞれの区域におけるレンズのMTF値をソフトウェア分析しました。

この「Middle」項目の分析区域はSFR Plus chart中央の四カ所におけるレンズのパフォーマンス(下図参照)です。MTF値が高いほど画素の解像レベルが高く、映し出される画面がくっきりとしています

image

図1:SFR Plus Standard Chart

試験チームは色温度(2800K、3500K、5000K)と照度(1000 Lux、100 Lux)を調整しながら分析を進めました。以下の各項目は光源を3500Kに設定したときの結果です。光源3500K(U35)というのは、アメリカの大手百貨店、「Target」が指定したバックライト広告の色温度であり、マイクロソフト社提供の通信サービス「Skype」の試験環境で指定されている色温度です。

下図のように、3500K/1000Luxの試験環境において、Apple iPhone 6 とAndroid Phone 2のシャープネスが優れており、画面がくっきりとしています。

列印

2. Sharpness Test (SFR Plus/ MTF30) – Corners

SFR Plus standard chart光学データ分析では、画面の周縁部における八カ所のMTF30値を評価します(下図参照)。

image

図2:SFR Plus Standard Chart

分析値のばらつきが小さいほど、レンズ周縁部の解像レベルが均一で、画質が高く、ユーザーから見て画面が鮮鋭で、コントラストが明瞭です。

下図によると、3500K/1000Luxの試験環境においては、三種類のスマホのうち、iPhone 6 は八カ所の数値が非常に似通っていて高画質です。Android Phone 1&2 の両者は曲線にばらつきがあり、場所によって画質が不安定でした。

列印

3. Sharpness Test (SFR Plus/ MTF30) – Sharpening

SFR Plus standard chart光学データ分析では、中央区域四カ所のSharpness 値を分析していきます。画像が鮮鋭であるほど、このシャープネスが高いが、高すぎると、画面の中の輪郭にギザギザのバリが出現します

一般的には、画像のシャープネスを標準レンジ内に収めるのが理想的です。この標準レンジ内にあれば、ユーザーにバリの存在を感じさせないと同時に、一定レベルのシャープネスを確保できます。

アリオンのシャープネス試験ではSkypeのレンズ試験基準を判断の基準とし、データが20を超えると、画像が過度にシャープになる、としました。下図のように、3500K/1000 Luxの試験環境にあっては、Android Phone 1とAndroid Phone 2はいずれも20を超えていますが、iPhone 6のほうは安定しています。

列印

実際の画像を比較すると、iPhone 6ではバリは不鮮明だが、Android Phone 2では顕著なバリが認められます。

列印

4. Image Total SNR (ST-52)

ST-52 standard chart光学データ分析では、異なる場所の画像信号のS/N比を測定しています。通常、S/N比(dB)が大きいほど高画質です。試験チームは3本の異なるスマホで図中12のブロックを撮影して、その優劣を分析ました。下図はS/N比測定を示す図です。

image

図3:ST-52 Standard Chart

ここでは光源の色温度を5000Kに設定しています。5000K(D50)の光源は「ソフトな日光」と定義されており、Skype試験環境で指定されている色温度でもあります。この環境で撮られた画像はホワイトバランスのずれが起こりにくいので、S/N比測定に適しています。

測定データによると、5000K/1000Luxの環境においてはiPhone 6のS/N比が優れています

が、5000K/100LuxではAndroid Phone 1が他者より抜きん出ています。S/N比にはカメラのファームウェア(Firmware)が大きく関係しているようです。

列印

5. Color Accuracy & Saturation

Macbeth standard chart光学データ分析では、Macbeth 24色のカラーチャートにおける色の異なるブロックを用いて、画像の色再現度を分析します。色温度と照度を調整しながら測定を進め、平均色誤差(Mean ΔC)と最大色誤差(Max ΔC)、及び色飽和度(Saturation-%)を評価基準としました。

-色誤差の数値が大きいほど、色誤差が小さい

-色飽和度の数値が高いほど、再現時の色の飽和度が高い

image

図4: Color Accuracy Analysis ResultとMacbeth 24 色カラーチャート

色誤差(Color Accuracy)の測定において、ΔC00 3500Kの環境下では、iPhone 6の色誤差が最も小さい結果となりました(下図参照)。

列印

同じ3500Kの環境下では色飽和度もiPhone 6が最良で、色が艶やかに再現されています。

列印

6. Auto White Balance

このMacbeth standard chart光学データ分析では、ΔCの数値を評価の基準とし、画像の中のグレー諧調をソフトウェアが分析して、グレー階調の色誤差を数値化します。通常は色誤差が小さいほど、Auto White BalanceAWB)の効果が優れています。

照度の異なる環境で試験を実施したが、1000Lux及び100Luxの光源では、いずれもAndroid Phone 1が優れたホワイトバランスを見せました。

列印

7. AF Speed

カメラのオートフォーカスの速度を測定します。秒数が少ないほど、フォーカシングが高速です。下図はフォーカシングの成否の判断を示す図です。

列印

この試験では、二種類の異なる環境で実施しました。1種類目は2800K / 20Lux、タングステンフィラメントランプを灯したときの室内環境に相当する環境です。この環境では、Android Phone 2が最も優れた自動フォーカス機能を見せ、0.7秒でフォーカシングが完了しました。

列印

2種類目の試験環境は、10520K/1200Luxで、オフィスに似た環境です。ここでもAndroid Phone 2が最も優れており、0.6秒でフォーカシングが完了しました。

列印

8. Micro Focus

自動フォーカスが機能する最短距離を測定する試験です。この距離が短いほど、近距離のフォーカシング機能に優れています

下図のように、Android Phone 2のパフォーマンスが最も優れており、4.4cmでも正確なフォーカシングができました。iPhone 6とAndroid 1のパフォーマンスは同レベルでした。

列印

CA試験の結果、総合的にはiPhone 6のパフォーマンスが最も優れていました。下図が試験結果の一覧です。

列印

 

UX Experience

「UX Experience」の試験では、三種類のスマートフォンにて被写体を変えて撮影を行いました。被写体は、日中の風景、夜の風景、植物、食べ物、室内、屋外で、これに自撮りを加えています。画像を比較して、それがユーザーにどんな感じを与えるかを分析しました。

組圖照片完整檔

いくつかの試験の結果を紹介すると、2800K/1000Luxの環境では、iPhone 6で撮った画像が実風景にいちばん近く、ホワイトバランスのコントロールが素晴らしい結果となりました。

列印

しかし、5000K/1000LuxだとAndroid Phone 2が実風景にいちばん近く、Android Phone 1で撮った画像は明る過ぎました。

列印

メーカー各社でホワイトバランスやシャープネスの評価基準が異なるため、アリオンでは顧客のニーズに基づきカスタマイズされたUX試験サービスを提供しています。上記のような被写体のみならず、HDR、フラッシュ、ビューティーモード、パノラマモードなどのカメラ機能についても、試験メニューをカスタマイズ企画することができます。

これらの機能は大手が競い合っている項目ですが、携帯電話本来の機能といえば、やはり通話です。というわけで、次回はオーディオに焦点を当てた試験をお届けします。

 

関連記事

スマートフォンのユーザー・エクスペリエンス最適化検証―ディスプレイ編