昨今、市販で販売されているほとんどのスマートフォンがタッチスクリーン式を採用しています。ユーザーは画面に指で軽くタッチするだけで直感的にスマートフォンを操作可能です。しかし、タッチした際に感度が鈍かったり、スムーズさに欠けたりすることがあります。競争の激しいスマートフォン市場では、細かい点が成功のキーとなり得ることから、アリオンの試験チームは、反応の敏感度、耐干渉性能、スワイプ操作のスムーズさなど、タッチパネルのディテールを深く掘り下げた測定、分析を行いました。
測定項目
測定項目は二種類あります。最初はパネル上で、スワイプ、マルチタップ、ドラッグといった、一般ユーザーがよく用いる操作の試験を行いました。
次に、タッチパネルの耐干渉性能に関する試験です。試験チームの経験では、Bluetooth、Wi-Fi、充電といった外部から加えられた行為が、タッチパネルの品質に影響を与えることから、この部分に関し、以下のような状況設定のもとに試験を実施しました。
タッチパネルの品質を試験するに当たり、下図のようにスクリーンを6本の赤ラインで4ブロックに分けました。
最初に、自動タップのアプリに提供されている直線座標を用いて平均ギャップと最大ギャップを計算しました。タッチパネル感度の測定であり、通常は、タップとタップのギャップが小さいほど良好です。二つの座標において最大の差を計算して、感度良好ゾーン(Good Zone)と感度不良ゾーン(Bad Zone)に分けました。
Android Phone 1を使って、先に自動タップのアプリでタップとタップの平均ギャップ(Average Gap)を計算し、ツールでスクリーン上に上図の6本ラインを描いてから、自動タップのアプリを用いて最大ギャップと平均ギャップを計算しました。データは下表のとおりで、領域別の感度の良し悪しがわかります。
次は、タッチスクリーンの反応速度の試験です。ハイスピードカメラで撮影して、試験対象のパフォーマンスを以下の三段階に分けます。
1. I/O Event:指先が画面に触れた瞬間
2. Pre-Event:指先が触れてから移動を開始するまでの時間
3. Post-Event:実際に線が表示されるまでの時間
下図はAndroid Phone 1を例に取った図です。画面上に縦線を描くと、0.23秒径過後に指の移動が開始でき、0.3秒径過後に移動の痕に線が表示されたことになります。
この方法と要領で、以下のようなユーザー行動について試験を実施しました。
1. 横線描画
横線描画ではiPhoneのパフォーマンスがすばらしく、画面をなぞってからわずか0.1秒で横線が現れました。Android Phone 1では0.3秒もかかっており、最も劣っていました。
2. 縦線描画
この試験では、描画した縦線が最も短時間で現れたのがiPhoneでした。Android Phone 2では0.35秒もかかっており、最も劣っていました。
縦線を描くタッチ試験において、iPhoneで縦線を描くと、ラインが非常にスムーズで、指が触れてから縦線が出現するまでの時間的ギャップがほとんどないのですが、Android Phone 1及び2では、縦線を描く過程で明白な時間差がありました。
3. 指二本による横線描画
スマートフォンの操作では、複数の指によるマルチタップ操作が頻繁に使われます。縮小や拡大といった操作には、二本指が使われます。
ハイスピードカメラの撮影を通して、iPhone 6の反応は0.1秒で最もすぐれたパフォーマンスを見せましたが、Android Phone 1では反応に約0.33秒かかり、まだまだ改善の余地があるのがわかりました。
4. 指二本による縦線描画
指二本の縦線描画でも同様にiPhone 6が最も優れたパフォーマンスを見せました。一方、Android Phone 1は反応に0.3秒かかりました。
指一本のときと同様に、指二本の縦線描画でも、iPhone 6ではほとんど同時に描画されました。その一方でAndroid Phone 1及び2では、指が線を描いてから実際の線が現れるまで時間差がありました。
5. エッジ部分のタッチと横方向ドラッグ
スクリーンのエッジ部分で指をドラッグさせたときの反応試験です。ここでもiPhone 6のパフォーマンスが優れていた一方で、Android Phone 2は反応に0.35秒もかかっており、試験対象の中で最も遅い結果となりました。
6. エッジ部分のタッチと縦方向ドラッグ
エッジ部分における試験とはいえ、ここではiPhone 6の反応が最も劣っており、ほかの試験対象とはかなり差をつけられました。
7. ホーム画面スワイプ
スマートフォンのホーム画面はユーザーが最も頻繁に接するページであり、ページ切り替えのスピードと円滑さはユーザー・エクスペリエンスに大きな影響を与えます。
iPhoneはページ切替に0.5秒かかるとはいえ、実感では0.05秒でページが切り替わるのを認識できるため、ユーザーは、iPhoneは反応が速く、操作を素早く処理できると感じるでしょう。
試験の結果によると、ページが完全に切り替わるまでの時間はAndroid Phone 1が最も短かいのですが、ページが切り替わるのをユーザーが認識できるまで0.14秒かかることから、ユーザー・エクスペリエンスという点ではiPhoneに較べると遜色ある感じがします。
タッチスクリーンの耐干渉性能
ユーザー行動の試験を終えた後、第二段階である「タッチスクリーンの耐干渉性能」試験を行いました。アリオン試験チームは以下の六種類の状況を準備して、スマートフォンの耐干渉性能を評価しました。
• Bluetooth通信中
• Wi-Fi通信中
• 端末充電中
• 電話着信中
• Bluetooth通信+Wi-Fi通信中
• Bluetooth通信+Wi-Fi通信+端末充電中
まず、三秒以内に一本の線を描き(左上コーナーから右下コーナーまで)、タッチパネル試験ソフトを用いて、そのルートの変化を検出します。たとえば、下のグラフにおいて、青のラインは無干渉のときの線であり、赤のラインは自動タップのアプリによるレポート結果です。この二本の線から、干渉発生時のずれ(単位:pixel)と最大ギャップを判断します。
ずれの大小は、ユーザーが画面をタップするとき、正確な場所をタップできるかどうかに影響します。たとえば、アプリで画像を修正するとき、着信によってタップのずれが大きくなると正しい位置を修正できなくなり、ユーザーは不便に感じます。また、パズルゲームを楽しんでいるときに画面上のずれが大きいと、思ったとおりのブロックをタップできなくなります。これも過剰なずれの影響です。
感度が高くないエッジ部分で、試験対象に対する干渉がないときの画像データを測定します(下表)。
次に、Bluetooth送信、Wi-Fi送信、及び充電による干渉をうけたときの線を測定します。ずれと端末ごとの最大ギャップが見て取れます。
状況ごとのデータを下表にまとめてみました。三種類の端末はいずれも、外からの干渉を受けると、ギャップもずれも大きくなる傾向がありますが、ユーザーの実感としては顕著な差はないと思われます。
画面の縁での試験では、Android Phone 1が好パフォーマンスを見せ、ずれはあまり大きくなく、最大ギャップは無干渉のときよりも小さくなっているくらいです。
iPhoneは着信があったときに最大ギャップが大幅に上がっており、著しく影響を受けていますが、全体的にずれは大きくありません。Android Phone 2は、最大ギャップに大きな差はありませんが、着信時のずれが大きく、着信時には、感度不良ゾーンでタッチにずれが生じることを物語っています。
次に、画面の中央部分、つまり感度良好ゾーンの試験を行います。同様にして、先に無干渉時のデータを測定して線を描きます。
外部からの干渉を加えたときのデータは、以下のとおりです。
下記の表はそれぞれの結果をまとめたものです。iPhoneは干渉の種類によらず影響は小さいものでした。Android Phone1 &2は、外部の干渉を受けた後も無干渉のときに近く、この三種類の端末はいずれも、感度良好ゾーンにおける耐干渉性能において優れたパフォーマンスを見せているといえます。
上述の状況以外では、3G/4G & GSM/ GPRSの違いにもよりますが音声コールもタッチの品質に影響します。このほか、内部の潜在的な干渉要因として、バイブレータ、スピーカー、レシーバーがあります。
データ送信については、上述のWi-Fi、Bluetoothに関して言うと、周波数(700/900/1800/・・・)によってタッチ操作の良し悪しに影響することがあり、しかも、この種の試験において送信される情報量は、音声ボイスの数十倍から百倍以上にも達し、帯域のレンジも広いことから試験の結果が大きくばらつきます。タッチスクリーンの試験の組み合わせは多種多様であり、アリオンではお客様のニーズに基づいて試験をカスタマイズすることが可能です。
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