ゲーム市場を変える!?バーチャル・リアリティ『VR』の世界
2016年現在、バーチャル・リアリティ(VR)がゲーム市場のトレンドです。複数のVR用コンソールが年内に発売されます。VR対応のアプリケーションは将来に渡って拡大する可能性があるとはいえ、市場は主にゲームに熱い視線が注がれているようです。アリオンは、まさに今こそがVRゲームシステムの状態を検証するための最善のタイミングであると考えています。そこで今回は、ホットなVRゲームの紹介と、特に注目を集めている3つのVRハードウェアについてご紹介いたします。
バーチャル・リアリティ(VR)ゲーム
バーチャル・リアリティ(VR)ゲームは、臨場感溢れる3D体験と映像音声を結びつけることで、プレイヤーにバーチャル・リアリティ技術を手軽に体験させることができます。この言葉は、今では『VR』と略されるようになりました。現時点ではまだ構想段階のゲームから、既にリリースされたゲームまで、様々な開発段階のVRゲームが世界中に存在しています。有名スタジオでAAAタイトルを獲得した実績があるものから、小規模なインディータイトルまで様々です。そんな中、ユーザーのハートをがっちり掴むと思われるいくつかのVRゲームをここではご紹介します。
EVE:Valkyrie(イヴ:ヴァルキリー)
1.EVE:Valkyrie (evevalkyrie.com)
EVE:Valkyrieの特長は、リッチなサウンドとクールに表現された映像、そして3Dによるチームプレーです。このスペースフライトFPSは、熱狂的な称賛でレビューされており、間もなくリリース予定のVRヘッドセット『Oculus Rift』(オキュラスリフト)とバンドルされています。まだ若干リリースが先に予定される、ソニーのプレーステーションVRシステムにもバンドルされます。
[参考:http://www.theriftarcade.com/eve-valkyrie/ ] 映画
Minecraft(マインクラフト)
2.Minecraft Cave(gamesminecraft)
Minecraftは世界中で大人気のサンドボックスゲームです。ブロックを地面や空中に配置することで、自由な形を作り出すことができます。世界中で7000万本が売れたこのゲームがVR化すれば、スマッシュヒットは確実でしょう。MinecraftはSamsung VRギアとOculus Riftの両方で間もなくリリース予定です。
[参照:GDCにてOculus RiftがギアVRでMinecraftに初登場 ]
Job Simulator(ジョブシミュレーター)
3.Job Simulator (jobsimulatorgame.com)
未来からやってきたジョブシミュレーションゲームであるJob Simulatorは、数々の賞を獲得したコメディーVRゲームです。ロボットが人間に代わって仕事をする世界で、プレイヤーは「Job Simulator」に入り、「働く」とは過去はどんな風だったかを知ることができます。グルメシェフ、オフィス勤務者、コンビ店員など数々の仕事をシミュレートして日常勤務を再体験できます。このゲームは今年リリース予定の三つの主要VRシステム(HTC Vive、Oculus Rift、プレーステーションVR)で正式リリースされます。
[参照:http://jobsimulatorgame.com ]YouTube
ご覧頂いたとおり、VR ゲームはアクション、アドベンチャー、シミュレーションなど多種多様なジャンルをカバーしています。VRゲームで本当に新しい点は、ゲームそのものではなく、むしろ従来の2Dから臨場感あふれる3D環境へと視覚が変わった点にあります。VR ゲームは先端のモーションセンサーとゲームコントローラを通したアクションを直接組み込むため、プレイヤーは従来以上に臨場感を感じることができます。シームレスな3D環境とモーション検出の融合はVR体験の成功に欠かせない要素です。2016年にリリースされる三つのVRシステムなら、臨場感でいっぱいの体験が可能となることでしょう。
次に、VRハードウェアについてご紹介します。
VRハードウェア
2016年は市販のVRシステム発売の元年ですが、市場の主流となるにはまだまだ時間を要することでしょう。VRシステムが市場導入のために直面している最初の問題は、ハードウェアの価格に見合った面白さをユーザーが享受できることを証明することです。初期採用組やジャーナリストたちは、ゲームの宣伝文句に頼っているようです。本当に大変なのはハードコアゲーマーが実際にVRシステムを使ってみたときにどうなるかです。
現状ではVRシステムは高価な周辺機器として位置づけられており、ハイスペックなPCやゲームコンソールに新規導入する必要があります。NVIDIA[1]によれば「臨場感あふれるVR体験のためには、一般的な1080pのPCゲームより7倍のパフォーマンスが必要」とのことです。
大部分のカジュアルなゲーマはハイスペックなPCを持たないため、こうした厳しいハードウェア要件がVRシステム導入のハードルを上げているようです。別の記事によれば[2]、世界的にはPCだと1300万台、PS4コンソールは3600万台、最適なVR体験を実行できる環境が整っているようです。つまり、合計5000万台がVRホストプラットフォームとしての潜在市場であることを示しています。
こうした環境的な制約があっても、VRシステムにフォーマンスの問題や健康上のデメリットが無い限り、人気が増える可能性は十分に考えられます。VR技術が発展するに従いユーザー体験は改善され、価格は下落することでしょう。場合によっては、VRシステムが従来型のディスプレイ装置の座を奪う可能性さえあります。そうだとすれば、相乗強化によって複数の業界にまたがって発展が考えられ、更には世界の見方まで変えてしまう可能性もあります。
続いて、2016年中にリリースされる三つの主要VRシステムについての詳細をお話いたします。
Oculus Rift(オキュラスリフト)
Oculus Riftはクラウドファウンディング、キックスターターを通して約240万ドルの資金調達に成功するなど、たいへん注目を集めたキャンペーンです。その後、製造元であるOculus VR, Inc.は、Facebookによって20億ドルで買収されました。資金調達から数年後に「開発キット」として2種類のプロトタイプが発売されています。開発キット、DK1 (2012)とDK2 (2014)は開発者向けの製品でしたが、VRに注目している一般ユーザーも数多く購入しました。Oculus Riftで初の製品版は、2016年3月末に出荷が開始されました。価格はUS$600で、この内容には、ヘッドセットディスプレイ、モーションセンサー、ゲームコントローラが含まれています。
HTC Vive(HTC ヴィヴ)
HTC Viveはモバイル機器メーカーのHTCとゲーム開発会社の共同事業です。2015年3月のモバイルワールドコングレスで公開されました。ディスプレイ解像度やリフレッシュレートといったハードウェア仕様はOculus Riftと同じです。Oculus Riftとの違いは、HTC Viveは『動き』を最優した設計であること、ルームスケールトラッキング機能(12 m2迄)、障害物を検出するための外付けカメラが付いています。HTC Viveは2016年4月5日に一般ユーザー向けに発売されました。価格はUS$800で、ヘッドセットディスプレイ、モーションセンサー、二個のゲームコントローラが含まれています。
PlayStation VR(プレイステーションVR)
このVRシステムは、ソニーのプレーステーション4専用に設計されています。2014年のゲームデベロッパーズカンファレンスで「Project Morpheus」として初めて公開され、2016年上期にリリースが予定され、後に2016年10月に延期されました。Oculus RiftやHTC Viveとは異なり、PS VRには一枚の1080p OLEDディスプレイしかありませんが、スクリーンリフレッシュレートは120 Hzと、他の製品より高くなっています。PS4との同梱版の価格はUS$500で、ヘッドセットディスプレイ、モーションセンサー、二個のPSムーブコントローラを同梱しています。
バーチャル・リアリティ市場分析
ソニーのプレーステーションVR システム(PS VR)は、US$400でVR ゲームを導入できるという、前述の2機種よりも有利なポジションを目指しています。これはOculus Rift(US$600)より安価で、HTC Vive (US$800)の半額です。PS VRは、VR対応PC(1,300万台)より約三倍所有者数の多いPS4(3,600万台)に対応しているので、短期的により多く販売される可能性も秘めています。[2] また、PS4本体を含めたPS VR ゲームシステムは約US$800でこの秋に発売予定です。[3]
HTC ViveとOculus Riftは両方共ハイレゾ対応のデュアルディスプレイ搭載のヘッドであり、こちらの方が優れたVR体験を提供するように見えます。しかし、こちらのターゲットは規模の小さいPCベース市場です。この2つのシステムは今すぐに入手可能であるという一方、PS VRは発売までに半年は待たなければなりません。2016年10月、PS VRの進撃が始まる前に確固たる防波堤を築き上げられるならば、これらの製品は生き残るでしょう。PC関連のハードウェアは常に改善されていることから、VRの人気度が高まることで、市場の優位性はPCベースのVRシステムに移り、ゲームコンソールは後れを取る可能性もあります。
ゲームデベロッパーズカンファレンスでの流行が示すとおり、ゲーム開発会社はVRゲームへの取り組みに力を注いでいます。2015~2016年で、VRタイトルについて取り組むゲーム開発会社の比率は7%から16%にまで増加しました。あるゲーム業界のインサイダーは「今年、VRこそより多くの企業が開発したい対象であり、・・・席巻してはいないものの、急に成長している」とコメントしています。[4]
2016年GDC業界報告書によると、75%のアンケート回答者が、VRが持続的に成長しうるビジネスであると回答しています。興味が増しつつある中でも、大半の回答者はVRシステムが従来のゲームコンソールをシステムとして採用するとは見ていません。例えば、アンケート対象者のうち、11%の人が2020年までにVRデバイスが現行の据え置き型のゲームコンソール基盤(米国世帯の40%が保有)を採用すると考えており、さらに多くの回答者(62%)はVRシステムが2020年までに米国世帯の10%を超えて保有することになるとは考えていません。
VRゲーム開発は急速に成長しているものの、ゲーム業界関係者は、VR出荷数はすぐには成長しないと見ています。ゲーム業界は、VRゲームを積極的に開発しつつも、同時に将来の成長見込みについては保守的な姿勢を維持しているように見えます。VR市場の今後の展開を予測することができない領域です。市販VRハードウェアの第一世代にどの程度消費者が反応するかに多くが掛かっています。
2016年GDC業界状況報告書によると、2016年初時点ではたくさんの開発会社が他のプラットフォームよりOculus Rift (19%)用ゲームコンテンツの開発に取り組んでいました。次の最も人気のあるVRプラットフォームはSamsung Gear VR (8%)とGoogle Cardboard (7%)でした。HTC ViveとPS VR はこれらを開発している開発会社のうち6%が取り組んでおり、第四位に付けました。
(参照:Oculus Riftが開発者の間で最も人気のあるVRプラットフォームと判明)
このアンケート結果には次の疑問点が残ります。PS VRが本当に市場シェアを有利に獲得するとするならば、何故多くの開発会社がOculus RiftをプラットフォームとするVRゲームの開発に取り組んでいるのでしょうか。これは、Oculus Riftがリリースされたばかりであるというアンケートのタイミングによるものと考えられます。しかし、タイミングが要因であれば、HTC Viveもまた高い割合であったはずです。この結果は、ゲームコミュニティに積極的に働きかけ続けてきたOculus VRの努力の賜物であるとアリオンは見ています。Oculus VRは市場で最も多くの「開発者キット」を提供したことで、ゲーム開発会社の間で浸透していきました。
VRは、新たな冒険の世界にプレイヤーを誘います。一部の評論家は、VRを20世紀のテレビに匹敵するほど世界にインパクトを与える初めになるかもしれない技術だとし、新たな媒体登場によるパラダイムとまで呼んでいます。時が経過しなければ何も分かりませんが、実際にそのパラダイムが起これば、VRゲームは技術革新をもたらす推進力の一つとなることでしょう。
追記:日本発、世界初の視線追跡型VR用HMD「FOVE」
FOVEは日本発のヘッドマウントディスプレイとして、スタートアップ企業である株式会社FOVEによって開発されたVRヘッドマウントディスプレイです。2015年5月にキックスターターを通して資金調達を開始し、わずか3日間で目標額である25万ドルを達成するなど、日本国内のみならず海外でも高い注目を集めています。前述で紹介した3製品との大きな違いは、視線追跡(アイトラッキング)機能を搭載している点です。視線でターゲットを定める、見ている位置に応じて背景をぼかせるといった、視線追跡ならではの機能を実装できます。また、他のVRシステムではコントローラを手に持って操作する必要がありますが、FOVEでは視線追跡による操作を採用しているため、ハンズフリーによるVR体験を可能としています。FOVEは2016年秋に向けたHDR製品の量産化を進めるとともに、VRコンテンツの拡充施策に取り組んでいます。
◆ お問い合わせ先
E-mail: service@allion.co.jp
◆ 参照
[1] “Get Ready: Unreal Engine 4 To Incorporate NVIDIA Gameworks VR | NVIDIA Blog”. NVIDIA Blog
[2] “Sony’s PlayStation VR Stands To Be Almost 3x More Popular Than Oculus Rift In 2016”. Forbes.com
[3] “Sony PlayStation VR Will Cost $399 When It Arrives in October”. NYTimes.com
[4] “GDC: 16% of Game Developers Are Working On VR, Up From 7% a Year Ago”. VentureBeat.com