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超短焦点プロジェクターとは

超短焦点プロジェクター(Ultra Short Throw Projector、略UST)はここ数年で徐々に人気を集めているAV機器です。従来のプロジェクターは長い投影距離を必要とし、画質は主に720または1080 pでした。しかし超短焦点プロジェクターは壁から数十センチの距離で80-150インチもの大きさの画面を投影することができ、さらにその多くは4 KUHDの画質を搭載しています。その上、超短焦点プロジェクターは豊富なAVストリーミング配信サービスに対応しており、空間が限られている家庭や個人の使用に非常に適しているといえます。

超短焦点プロジェクターは主にDLP(Digital Light Processing)※註 を利用してスクリーンの表示を行っています。DLPのプロジェクターは、回転するRGBカラーホイールに光を通し、赤、緑、青の色にそれぞれ分けます。その後、マイクロミラーが敷き詰められたDLPチップに光が反射されます。これら全てがプロジェクターのレンズを通りスクリーンに光が反射して映像が形成されます。

※註:DLPはTexas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)社が開発した独自の技術です。

市場でよく使われる「レーザーテレビ」という言い方は、実は「超短焦点プロジェクター」に「専用のプロジェクタースクリーン」を組み合わせて映像を映し出すTVのことを言います。多くのプロジェクターメーカーは一般的なプロジェクター用の白いスクリーン以外にも、レーザーテレビで使われるような外界の光を遮断することができる新しいスクリーンも販売しており、スクリーン上の画像の明るさをさらに向上させることを目標にしています。

超短焦点プロジェクターの市場動向

市場では大型テレビの値下げの傾向が続く中で、性能を考えると安価で高画質、また100インチのサイズまで調節できるというのが超短焦点プロジェクターがヒットした要因の一つです。

2021年、世界の超短焦点プロジェクター市場の規模は12億ドルと言われていますが、それが2028年には70億ドルに達すると予想され、この期間内の成長率は28.56%にのぼるとされています。

4Kレーザー式の超短焦点プロジェクターは2019年に発売されて以来、販売台数は年々25~40%の成長を見せています。さらに新型コロナウイルスの感染拡大で自宅にいる時間が増加し、販売成績はますます向上しています。2024年には6倍以上の売り上げが見込まれています。

超短焦点プロジェクターの価格は決して安くはありません。基本的に本体価格は2000ドル以上で、かなり高価なインドア娯楽の一つとなっています。

図:市場の超短焦点プロジェクター価格(一部)

超短焦点プロジェクターと一般的なプロジェクターの投影距離の違い

プロジェクターの投写比は、投射距離をスクリーンの幅(対角線ではない)で割ることで計算することができます。例えば、幅5フィートのスクリーンから2フィートの位置にプロジェクターを設置すると2÷5=0.4の投写比で計算することができます。

プロジェクターの投射比が0.4未満の場合には、一般に超短焦点プロジェクターを使用する必要があると定義されています。

なぜなら超短焦点プロジェクターは画面からほんの少し離れた場所であれば大きな画像をスクリーンに投影することができるからです。

リビングのスペースが足りなければ、一般的なプロジェクターを置くことができる場所も少なく、それでも大きなスクリーンを投影したい場合には、超短焦点プロジェクターを選択するのも良いと思います。

一般的な超短焦点プロジェクターは、壁からの距離が20 ~ 30センチだと80 ~ 100インチのスクリーンを投影することができます。

図:超短焦点プロジェクターの最低距離は、機種によって異なります。 (Photo: Samsung)

超短焦点プロジェクターのメリット

 配置がより簡単に 

超短焦点プロジェクターの投影に必要な焦点距離は非常に短く、その本体はリビングのテレビキャビネットに置かれることが多いです。そのため天井に新たな配線を必要としません。超短焦点プロジェクターは通常、100インチ以上のスクリーンを組み合わせて使用します。一方、従来のプロジェクターは天井に設置し、一般的なスクリーンを置くことで使用することはできますが、天井用の別の配線が必要なので手間がかかってしまいます。

このほかにも超短焦点プロジェクターと従来のプロジェクターは設置時にも大きな違いが生まれます。一般的にプロジェクターを置く時は空間をまず気にしなければなりません。大きな画面を投影するには一定の投影距離が必要です。通常は3.5メートル以上で100インチの画面を映し出すことができます。この距離は一般的な家庭にとってはとても難しく、100インチ以上の超巨大画面を見たいと言うのは実現し難いでしょう。また、一般的なプロジェクターのほとんどは天井に吊るす必要があるため、設置時の配線工事がさらに難航します。

 長寿命 

また、超短焦点プロジェクターは光源として固体レーザーを使用していますが、従来のプロジェクターは通常超高圧水銀ランプ(超高圧うUVランプ)を用いています。レーザー光源の寿命は一般的に30000時間以上もあり、毎日8時間使用しても超短焦点プロジェクターの寿命は少なくとも12年もあり、従来のプロジェクター電球の寿命(約6~8000時間)より優れています。

 多様化する搭載規格 

超短焦点プロジェクターは現在、比較的高価なAV機器と言えます。搭載されているAV規格は4K UHDであり、HDR 10に対応しており、高品質な音源の入出力をサポートしています。少なくともデュアルチャネル機能が独立したスピーカーとBluetoothは内蔵してあるでしょう。従来の低価格プロジェクターの多くは1080 PFHDでしか対応しておらず、機能はいたってシンプルです。

色彩に関してはメーカーごとに独自の技術があり、ハイエンドテレビに迫る勢いで色域や高精度なところからも従来のプロジェクターよりも段違いで優れていることがわかります。このほかには、超短焦点プロジェクターの多くは独立したプロセッサーとメモリを備えており、Androidや自社のOSを実行しているため、スマートテレビのように数多くのストリーミングやインタフェースなどがあることは従来のプロジェクターと大きく異なります。

ここでひとつ、超短焦点プロジェクターに関するルーメンの問題について少し説明します。多くのメーカーのプロジェクターは、いわゆる「LEDのルーメン」やそれぞれの「電球の明るさ」を自社製品のANSIルーメン値として掲載することがよくあります。しかし、それは国際標準ISO 21118:2020の定義を用いて測定したものではなく、独自の方式、ひいては各メーカーごとの独自の計算方式によって表現されるため、ユーザーがプロジェクターの明るさについて誤解を生んでしまう可能性があるため購入前にはよく注意しなければなりません。

EPSONが以前提起した訴訟案については、次のリンク(英文)を参照してください。

https://news.epson.com/news/vava-settlement-brightness-projector

超短焦点プロジェクターの主な出入力インターフェースについて

超短焦点プロジェクターは数多くの有線インタフェースと無線機能を備えており、ユーザーはそのAV出力と外部オーディオ機器をより自由に配置することができます。

  • USB 2.0 または 3.0:ポータブルディスクまたは外付けハードディスクを接続することができ、直接再生することができます。
  • HDMI 1.4 または 2.0/2.1:ARC、eARC及び4 K UHD 30/60 P出力に対応することが可能です。
  • RJ 45:100 M/1000 Mの有線ネットワークがあり、一部DLNAでNASに保存されたファイルの共有も行えます。
  • S/PDIF:光デジタルケーブルが使用可能です。
  • 3.5 mm オーディオ:従来のアナログ音源出力も可能です。
  • Bluetooth機能:Bluetoothスピーカーまたはヘッドホンが出力でき、キーボード/マウスにも対応しています。
  • 無線機能:ワイヤレス投影に対応し、Miracast®,AirPlayなども可能です。一部のメーカー(例:LG)にはGoogle AssistantやAmazon Alexaが内蔵されており、中系メーカーの愛ちゃん(キャラ名)も内蔵されています。

そのほか、メーカーや国によって超短焦点プロジェクターには、スマートTVとソフトウェアが組み込まれているように、Disney+、Netflix、YouTube などのさまざまなストリーミングサービスや、Twitter、FB、IGなどのSNSも内蔵されています。

よくある問題点

このような製品はインタフェースがかなり複雑なため、その周囲の機器を含めてさまざまな接続問題が発生しやすくユーザーの体験に影響を与えることもあり、その結果ユーザーからの返品や交換の相談にもつながってしまうことがよくあります。

アリオンは豊富なプロジェクターテスト経験をもとに、超短焦点プロジェクターによくある不具合問題について、2019-2022年間のテスト結果を以下にまとめました。

※DUT:超短焦点プロジェクター

  • 特定のMHLケーブルを使って接続できません。
  • プロジェクターの解像度を切り替えるときにノイズ、画面がチカチカ、または画像が重なる現象が発生します。
  • 入力画面を切り替えると画面が黒くなります。
  • セットトップボックス(STB)接続後にHDMIケーブルを再度抜き差しすると4K 30Hzの解像度が維持できなくなります。
  • Apple TV 4Kは、1080 P HDRに設定すると画面の色に異常が発生します。
  • Sonyプレーヤーを使用している際、解像度720 x 480 i@60 Hzに切り替えると突然信号を検出できなくなります。
  • Xbox接続時にプロジェクターのCEC機能が利用できなくなり、電源部分の連動が使えません。
  • シャーププレーヤーを接続するとOSDに4 Kと解像度の誤表示が出ます。
  • HDMIケーブルを抜き差しすると解像度が3840 x 2160/30 pから1080/60 pになります。
  • DUTとそのプレーヤーをOFFにすると、DUTのBluetoothリモコンが何度か押さないと再起動しません。
  • 一部の市販携帯電話がDUTにワイヤレスで投影できません。
  • DUTに接続されているBluetoothスピーカーの中には、サウンドが断続的に再生されるものがあります。
  • PCを使用してDUTに接続すると、画面に異常が発生することがあります。

さらに当社はAmazonで評価が多い超短焦点プロジェクターの6機種を調査し、以下の特に良くなかった1-3つ星の評価だったものから、実際に購入したユーザーの不満の声をまとめました:

 ユーザーの不満足と出たフィードバックについて 

以上から彩度や明度、コントラスト、耐久性の機能的な問題に加えて、TVや従来のプロジェクターのように互換性の問題が多く見られます。特に周辺機器とOSシステムは日に日に進化していて、厳密なテストをせず市場で販売してしまうと、さまざまな問題が発生し自社のブランドイメージに対し悪影響を与える恐れがあります。

超短焦点プロジェクターのテストをするにあたって

当社は長年のプロジェクターテストの経験により、超短焦点プロジェクターの性能や機能、UIインタフェースに関して以下のテストを推奨します。その製品が正式に発売される前から既に市場に出回っている各種の周辺機器などに対してテストを行うことで、発売後のクレームを減少することができます。

 接続性・互換性テスト 

PC/Mac/タブレットやテレビ/携帯電話/モニター/HDMIケーブル/ルーター/アンプ/サウンドバー など

 機能テスト 

製品機能を確かめるテスト

 安定性テスト 

長時間の再生/ファンの騒音と消費電力を確認し、製品の不安定な問題を特定

 Wi-Fi/Bluetoothテスト 

環境に影響を受けやすいワイヤレス機器についてのテスト

 ストリーミングテスト 

現在、インターネットを通じて映画や番組を視聴することが多く、プロジェクターの多くには様々なストリーミングサービスが内蔵されています。アリオンはグローバルのVPNパートナーと提携し、さまざまな環境や周辺機器を組み合わせたテストを行うことができます。

当社は豊富な互換性テストの経験があり、業界最先端な設備・機器を揃えております。製品の特性と状況に基づいて、最高品質の認証・検証サービスを提供しております。

関連の検証テストサービスについてより詳しい情報をお求めの場合は、アリオンのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。