Allion Labs / Chris Wu
認知度の低かったThreadネットワークテクノロジーが、最近スマートホームの革新的な共通規格「Matter」のおかげで大きな注目を集めました。Threadは一体どういうものでしょうか。
スマートホームの通信ブリッジ「Thread」
Threadは、低消費電力デバイス(センサーなど)と低遅延に設計されたメッシュ(Mesh)ネットワークプロトコルです。この技術は、家にあるインターネットネットワークやWi-Fiに依存せず、専用メッシュネットワークを構築して家庭内のデバイスを接続することで、簡単、安全、高い信頼性且つ低コストの方法で、家庭内に分散して配置された様々なスマートホームデバイスを接続することができます。例えばセンサー、ドアロック、カーテン、電球、温度調節器、警報器などのデバイスは、数ヶ月やそれ以上の期間変わらず放置されたままの場合があり、必要な時だけ呼び出されて簡単な情報を送信した後に、可能な限り長時間電力を保存するように、またスリープ状態に戻ってバッテリーの電力を節約するよう設計されています。また、Threadネットワークは拡張性があり、250台以上のデバイスをサポートすることができます。
スマートホームのThreadデバイスには、主にルーターやエンドデバイスの機能があります。通常ルーターは外部の電源を必要とするデバイスで、電球やスマートプラグのように、エンドデバイスとの通信を提供する役割を果たしています。一方エンドデバイスは通常バッテリーで動くデバイスであり、センサーやドアロックなど、長時間スリープ状態を維持してバッテリー寿命を延ばすことができます。また、Threadネットワークには自己修復機能があり、ネットワーク内のどのルーターがオフラインになっても、別のルーターがすぐに代替して役割を引き継ぐことができるので、ネットワーク障害が発生することはありません。Threadネットワーク内のデバイスは、点と点で直接接続して通信し合うため、別のコントロールデバイスに接続する必要はなく、また、最適な接続経路を検索することができるため、接続の消費電力を直接低減し、遅延や衝突を減らすことができます。
下の図は、Threadネットワーク内の様々なスマートホームデバイスの役割と相互作用を簡単に示しています。
Threadネットワークで最も特徴的なものは、Threadボーダールーター(Thread Border Router)です。Threadネットワーク自体は独立して動作し、各エンドデバイス間で直接通信することができます。しかしながら、インターネットに接続する場合は少なくとも1つのThreadボーダールーターが必要で、その役割はThreadネットワークとインターネットを相互接続することです。そのため、ネットワーク接続を介して、家にいなくてもスマートホームデバイスを制御することができます。例えば、AmazonのEchoスマートスピーカー(第4世代)、AppleのHomePod Mini、Apple TV 4K(第2世代)はすべてThreadボーダールーターの機能を備えています。
現在市販されているThreadテクノロジーをサポートする製品には、次のようなものがあります。
- スマートドアロック
- Wi-Fi ルーター
- スマートスピーカー
- スマート電球
- スマートセンサー
Threadはインターネットプロトコル(IP)の技術プロトコルを採用しているため、様々なIPプロトコルをサポートするアプリケーション層に接続することができます。以下の図は、ThreadがMatter、DALI+、HomeKitなど、様々なIPプロトコルに基づくアプリケーション層をサポートしていることを示しています。ユーザーは、任意のアプリケーション層を一つ選択して、自身に属するアプリケーション層を開発することもできます。
(Image: Thread Group)
Matter – スマートホームの新しいスタンダード
Matterは最新のIoT標準で、様々なスマートホームデバイスを統合するために使用されています。アクセサリがどの方法で接続されていても、Matterを介してクロスプラットフォームで使用でき、家庭内にある異なるブランドのスマートホーム製品でも互換性があります。ここ数年、スマートホーム分野の企業は常に他の企業と製品を差別化するため、自前のエコシステムを作成し、消費者市場を独占しようとしてきました。しかしその結果、各スマートホームデバイスのワイヤレス接続空間があまりにも複雑になり、本来の目的である利便性を失っていました。
当時ZigBee Allianceのメンバーである米Amazon、Apple、Googleなどのテクノロジー企業が2019年12月、スマートホーム製品間の互換性を高めるため接続規格を開発するワーキンググループ「Project CHIP」(Project Connected Home over IP)を立ち上げました。2021年5月、ZigBee AllianceはCSAに改名され、Project CHIP はMatterに名称が変更されました。Matterは、インターネットプロトコルIPv6ベースでWi-Fi/BLE/Threadの3つの無線規格を採用します。主な目的としてはプラットホームを横断して主要なスマートホームIoTエコシステム間の統合を推進し、スマートホーム製品間の互換性を高めることを目指します。
下の図は、Matterが動作する構造の説明です。ネットワークは、エコシステムとクラウドシステム(Ecosystem and cloud)、アプリケーション層(Application Layer)、ネットワーク伝送層(Networking / Transport Layer)、物理的/リンク層(Physical / Link Layer)に主に分けられます。
Matterは“アプリケーション層”に位置し、デバイス機能を定義する役割を担い、“ネットワーク伝送層”はデバイスとスマートホームシステムを接続し、ZigBee、Thread、Wi-Fi、Bluetoothなどの様々な伝送方式を介して接続することができます。デバイス間の自動化された制御はスマートホームの最も重要な機能であり、ThreadプロトコルはMatterアプリケーションの下で、より安全で便利且つ高速な接続を提供します。
以下の図は、家庭ネットワーク内でThreadを使用したMatterデバイスの動作方法を示しています。例えば、MatterスイッチコントローラーはThreadに対応する電球を直接制御することができ、スマートフォンやクラウドアプリケーションを介する必要がありません。
Thread認証の取得にお困りですか?
Threadは、スマートホームの最も重要な標準接続プロトコルです。Matter規格をサポートする製品は、いずれもThread技術プロトコルをサポートする必要があり、Thread認証テストに合格することが必須となります。
テストにより製品の信頼性と相互運用性を高め、市場競争力とブランドの信頼度に繋がります。信頼できるテスト認証機関を長期的なパートナーとして選択することは、製品品質の確認においても重要な要素の一つです。アリオンはMatterとThreadの認定試験機関として関連認証プログラムを提供するだけでなく、IoT製品に対し最適なIoT検証ソリューションもワンストップで提供することが可能です。
アリオンは1,000台以上のスマートデバイスを提供し、完全な互換性検証テストに加えて、様々なプラットフォームや接続されたデバイス上でお客様の製品がスムーズに動作することを確認しています。
- 接続性・互換性テスト(Compatibility Test):ノート型パソコン/携帯電話/タブレットやテレビ/モニター/プロジェクタ
- 機能性テスト (Functionality Test)
- リミットレス干渉テスト(Wireless De-sense Test)
- ユーザーエクスペリエンステスト(User Experience Test)
- 競合分析と品質向上コンサルティング (Competitive Analysis and Consulting)
以上のテストを実施するだけでなく、お客様の製品に最適なテスト項目の策定、競合他社製品との比較テストなども対応することが可能です。本記事の内容やテストに関してご質問などございましたら、アリオンのお問い合わせフォームからお問い合わせください。
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