Allion Labs/Lexus Lee
VESA AdaptiveSync技術について語る場合、有名なグラフィックカードGPUメーカーのAMDについて話す必要があります。最初にAMDが2014 年にAdaptiveSyncのアイデアをVESAに提出し、その後、この技術を応用したい人が使えるように、AdaptiveSyncホワイトペーパーにしました。この技術は、主に下の図のようにモニター上でゲームをプレイする際、ティアリング(tearing)やスタッター(stutter)という現象を解決するためのものです。現在AMDはAMD FreeSyncとして、NvidiaはNVIDIA G-Syncテクノロジーとして、それぞれ独自に開発しましたが、依然として主にティアリングとスタッターの問題を解決するために使用されています。
もちろん、AdaptiveSync技術には他の利点もあります。例えば、ノートパソコンがAdaptiveSyncをサポートしている場合、垂直リフレッシュレート動作に関しては、ノートパソコンは再生中コンテンツのフレームレートに応じて画面を更新し、比較的高い垂直リフレッシュレートでは動作しないため、省エネ効果を得ることができます。
VESA AdaptiveSync 認証プログラムの誕生
2021年から2022年にかけて、VESAワーキンググループはAdaptiveSync伝送要件を再検討してこれを策定し、この仕様をDP2.1仕様に組み込みました。これにより、AdaptiveSyncの伝送要件は、AMDのホワイトペーパーで以前に提示されたものよりも完全なものとなりました。そしておよそ2022年4~5月の間、VESAはDisplayPortインターフェースをサポートする、ディスプレイ製品向けのVESA AdaptiveSync認証プログラムを正式にリリースしました。
このプログラムにはMediaSyncおよびAdaptiveSyncという2つの仕様が定義されています。製品が認証テストに合格すれば、下の図に示すようにVESA Adaptive Sync ロゴ(数字はディスプレイの最大リフレッシュレートを表します)とVESA Media Syncロゴを使用することができます。
詳細はVESA AdaptiveSync公式ウェブサイトにてご確認ください。
VESA AdaptiveSync 実測したテスト結果
VESA AdaptiveSync Display Compliance Test Specification (Adaptive-Sync Display CTS)では、50 以上の自動ディスプレイ性能テストを包括的かつ厳格に規定されています。アリオンの実際のテスト経験とテストデータにより、現在実測したモニターがこの認定テストに合格する確率は50%しかありません。わずか50%の合格率というテストコアとなる項目が「フリッカーテスト(Flicker test)」です。
それではこのテスト項目についてお話しましょう。このテスト項目はちらつきの程度をテストするものです。実は、一般的によく知られているHDMIにも同様の技術(Variable Refresh Rate)がありますが、HDMIの認証項目の中で、パネルに対するフリッカーチェックを実施しません。ユーザー側に対し、画面のちらつきがひどい場合、ユーザーの目を傷つけてしまうため、フリッカーテストは最初に品質の悪いパネルを除外することで、間接的に目を保護します。このため、筆者はVESA AdaptiveSync認定モニターを使用した方がよいと考えています。
フリッカーテストは固定リフレッシュレートと動的リフレッシュレートに分けられます。モニターの90%が固定リフレッシュレートテストに合格できますが、動的リフレッシュレートテストに合格できるのは50%だけです。動的テストなので、更新レートが常に変化していることがわかります。連続して変動するパターンが4種類ありますが、それ以外は除外して、最悪のケースにつながる方形波パターンだけを見てみましょう。このパターンは、ディスプレイの最大フレッシュレートから最小フレッシュレートに直接ジャンプし、これをずっと繰り返します。その波形は下図(48-165Hz)に示すように、四角形が連続するように表示されます。
下の図のパネル輝度反応の角度からも、これが四角形パターンの波形であることが分かります。
比較的パフォーマンスの悪いパネルは、四角形のパターンになると、すぐに画面 (肉眼で見える画面のちらつき)が点滅します。現在の解決方法は、ほとんどの場合パネルを直接交換してしか解決できず、ファームウェアの調整だけでは解決できません。
フリッカーテスト項目の仕様要件は、中心点が-50dB未満でなければならず、-50dBを超えるとテストに合格できません。ここで特に注意すべきなのは、中心点の測定値が-60dB未満の場合、中心から対角線までの他の4つの中間点を測定する必要がないことです。値が-50dBと-60dBの間にある場合、これら4点を測定する必要があり、また測定値がいずれも-50dBを超えてしまうとテストに合格できません。
業界で唯一の全VESA認証プログラムを提供できる認定試験機関
現時点ではVESA AdaptiveSync認証についてVESAはDisplayPort Sink製品向けのみ策定しましたが、将来DisplayPort Source製品のAdaptiveSync出力がDP2.1仕様に準拠していることを確保できるよう、DisplayPort Source製品に対しても関連規格の策定を予定しています。
アリオンは、テスト業界で初めてVESAに認定されたVESA AdaptiveSync認証テストセンター(Authorized Test Center、略ATC)として、お客様のゲーミングモニターを対象にVESA AdaptiveSync認証取得をサポートしました。
これに加えて、アリオンはVESA DisplayPort、VESA ClearMR、DisplayHDRなどの認証プログラムの実施に対応することが可能です。また、HDMIやThunderboltなど他のビデオ・オーディオインターフェイスのテストおよび技術コンサルティングサービスも提供しています。関連の検証テストサービスについてより詳しい情報をお求めの場合は、アリオンのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。