Allion Labs/Franck Chen
有名なマーケティングリサーチ社のStrategy Analytics 2021年調査レポートによると、2020年年末の時点で、世界中の6.65億を超える家庭にスマートテレビがあり、スマートテレビを有している家庭の割合は全世界の34%を占めています。2026年には11億の家庭がスマートテレビを有し、普及率は全世界の51%を占める見込みです。
(Source: Strategy Analytics)
OTTストリーミングメディア(YouTube、Netflixなど)とその他のホームエンターテイメントが盛んになり、二年間にわたるパンデミックの影響に伴い、スマートテレビの普及率と重要性がより高まっており、エンドユーザーが製品に接触する時間が増え、テレビをより良いものへとグレードアップする意向も強くなってきました。従来のテレビからスマート機能が付いているテレビに買い替える消費者が増えているということは、ユーザー体験を如何に迅速に、より良いものへと改良・最適化するかが関連メーカにとっては最も重視すべき課題となるでしょう。UX/UIの設計において見落としてはならないことを認証業界一のアドバイザーであるアリオンがご共有いたします。
OOBEとは?
まず、OOBEが何なのかについて説明します。近年では、消費者が買い物をする際、その商品に対する第一印象のほとんどはネットで配信されているさまざまな製品やサービスの「開封レビュー(レビュー動画)」の紹介から得ていると思います。まさにそれがOOBE (Out-Of-Box Experience)で、ユーザーが商品を開封して使用し始めた最初の印象と体験を指しています。
OOBEはハードウェアとソフトウェアの2つに分けられます。
- 良いハードウェアOOBEは、商品を手にした時のパッケージ・梱包・デザインが期待通りだった場合の感動と期待を上回るクオリティへの驚嘆をユーザーにもたらします。全体的に商品に疵や欠損が無く、組み立てが簡単で明確な指示がありユーザーがすぐにでも使いこなせるなどが該当します。
- 良いソフトウェアOOBEは、ダウンロード/インストール、ウェルカムページから初期設定までの手順、ガイドなどがユーザーに便利・快適・スムーズだと思われるかどうかなどが該当します。
要するに、良いOOBEは消費者が自ら進んで新しい商品を購入した喜びを分かち合いたくなり、インターネットを通じて開封レビューなどを行い、商品を良い方向に宣伝する効果があります。
UI/UXデザインの重要性
ユーザーがさまざまな機能を体験する前に、最も直感的な印象や感覚を与えるのは製品やソフトウェア自体のUI(User Interface)とUX(User Experience)のデザインです。
- 良いUIデザインは質感が良かったり、気持ちのいい配色デザインだったり、製品の見た目を良くします。
- 良いUXデザインは、操作がスムーズだったり、便利だったり、違うシチュエーションにおいてユーザーに優しいヒントやインタラクティビティがあったり、製品の使い勝手が優れています。
とにかく、良い製品にはUIとUXデザインのどちらも欠かせません。
では、どのようなOOBEとUI/UXがテレビを購入した大抵の消費者にとって重要なポイントなのでしょうか?また、違う国・地域、異なる習慣においてどのような項目を考慮しなければならないでしょうか?アリオンが30年にわたる経験を以て、テレビの設計において評価のポイントをピックアップし、4つの事例から困難な点や改善のアドバイスを共有します。
事例1-OOBE篇
2種類の異なるメーカ(Brand A、Brand B)の高性能テレビをテストの対象としています:
テスト項目(1) 初回の電源投入から初期設定画面が表示されるまでの時間
Brand-Aは電源投入時のローディング時間が3分ほどかかり、ローディングの進捗を表す%プログレスバーが表示されません。これはユーザーをイライラさせたり不快感を与え、更にはシステムのパフォーマンスに異常があったり、クラッシュやフリーズが発生しているのではないかと思わせてしまいます。一方、Brand-Bはわずか4秒で設定画面が開いたので、ユーザーにシステム動作がスピーディーでスムーズだと感じられます。
◆アリオンから一言◆
これは昔のパソコンと今のパソコンの立ち上げ速度差のようなものです。前者はユーザーの期待に水を差し、せっかく高いお金をかけて高性能なテレビを買ったのに無駄になったと思わせ、製品の評価に酷く影響してしまいます。そのため、クレーム殺到や業績がガタ落ちすることのないよう、製品をリリースする前にきちんとした検証テストをすることをお勧めします。
テスト項目(2) ワイヤレスAPと接続成功するまでにかかる時間
違うメーカブランドの異なる型番のAPでワイヤレス接続テストを行ったところ、Brand-Aはノイズの有無に関わらず、接続にかかる時間がBrand-Bの2~4倍でした!
◆アリオンから一言◆
この競合分析から、Brand-Aには平均20~40秒の待ち時間が必要なのが分ります。ユーザーにとってはこのテレビの接続能力が明らかに「遅い」と感じられ、製品に対する印象を悪くします。
お客様の問題点を洗い出し、改善のサポートをするため、アリオン以下に更なる分析とアドバイスを行っています。
以下3つのタイミングの測定からお客様の製品の問題点の洗い出しをサポート
テスト結果
1. TVのIP address取得(In Sniffer)時間の測定について、全体的にBrand-AとBrand-Bに顕著な差は見られませんでした。(difference < 0.2 secs.)
2. TVのデータ転送(transmit data)(From Ping)時間の測定について、Brand-AはBrand-Bよりも速い結果となっています。
3. 最も大きな差をユーザーにもたらしているのは、「TVのデータ転送(transmit data)可能」のタイミングから「TVに『Successful Connection』メッセージが表示される」までの処理時間の長さでした。
以上の分析結果から、アリオンはお客様に対して、ユーザー体験を改善するためには上述の3番目の処理性能の調査と改善を行うようアドバイスしました。その後、お客様はこのアドバイスを基準とし、製品の電源投入(立ち上げ)プロセスと接続の速度を大幅に改善でき、今までずっと気が付かなかった製品の欠陥とディテールを指摘したアリオンに感謝しました。
事例2―UI篇
3種類の異なるmodule(DUT1, DUT2, DUT3)をテストの対象としています:
テスト項目:設定操作とトランジションの終了待ちのシチュエーション
上の表から、DUT-3のページデザインには、文字しかなく、画像を付けた説明がないため、ユーザーに文字を読ませなければいけませんし、理解に困る場合もあります。また、動画や効果音が全くなく、テレビのようなビデオ・オーディオディスプレイ製品にとっては面白味に欠け、つまらない印象をユーザーに与え、「本当に高性能なスマートテレビを買ったの?」と思わせてしまう可能性があります。
三者を比較すると、DUT-2の設定画面には画像を付きの説明に加え、トランジション動画と効果音もあり、ユーザーの目を惹き付けることがで、この商品のUIデザインにはテクノロジー感、インタラクティビティ、繊細感があると感じてもらえるでしょう。
◆アリオンから一言◆
多機能なビデオ・オーディオデバイスであるスマートテレビにおいて、ユーザーにとって最も重要なのは、あらゆる設定の簡単で分かりやすい説明です。モダンな画像と文字による解説だと尚良いです。また、味気ない設定とトランジションの終了待ち時間の中に、如何に気の利いた視覚的効果と聴覚的効果を継続的に与えあれるかが、ユーザー体験の加点と減点に大きく影響を与える鍵となります。
事例3-UX篇
2種類の異なるメーカ(Brand C、Brand D)の高性能テレビをテストの対象としています:
テスト項目:ワイヤレス接続状態を考慮したシチュエーション
4種類のよくあるインターネット接続シチュエーションをシミュレーションし、順番にテストを実行しました。結果は以下の通りです。
Brand-Cは異なるシチュエーションに基づき、自発的かつ適時にインターネットの状態をユーザーに伝え、トラブルシューティングできるようにしています。一方、Brand-Dは接続状態を伝えるメッセージが全くないため、ユーザーは問題の原因を見つけられず、興が醒めてテレビを見る気が削がれてしまいます。
◆アリオンから一言◆
昨今のスマートテレビはインターネットを接続しなければ使用できないものが多くあります。しかし、インターネットの接続がさまざまな原因で中断してしまうのは避けることができず、直接ユーザー体験と評価に影響してしまいます。そのため、UXの設計上、インターネットのあらゆる状態を考慮するほか、製品リリース前に完全な検証テストを行うことが重要になります。
事例4-特定の国/地域の使用シチュエーションと習慣
テレビには違う国で異なるテレビの信号システムがあるほか、別々の使用習慣とニーズがあります。
日本の地域のテレビを例にすると、日本の国民は「番組を録画」する習慣があります。そのためUI/UXの評価項目を設計する際は、番組録画のあらゆる方法・操作・再生などのシチュエーションを重点項目とします。
例えば、以下の関連機能の操作:
1. ライブ番組の録画
2. 録画予約
3. 録画リスト
4. 録画番組の再生
5. 外付けハードディスク
6. 番組の音声検索、音声録画、音声再生
7. 録画関連機能の操作説明
◆アリオンから一言◆
UI/UXの評価項目を設計する際は、共通の重点項目以外に、特殊な国の使用シチュエーションと習慣も考慮に入れる必要があります。そうすることで、現地の消費市場のニーズを満たし、市場占有率の拡大に繋がります。
スマートテレビの普及に伴い 素早く対応するには充分なUI/UX評価を行うことは必須
アリオンはアジア、ヨーロッパ、北アメリカにそれぞれ拠点を置いており、各分野の世界的一流ブランド(メーカ)にサービスを提供したことがあります。各国の製品特性を理解しており、検証試験を行った経験も多くあります。そのため、さまざまな製品に対して、最も現地の消費者の使用観点と評判に見合ったUI/UX評価を提供し、最もコストパフォーマンスのあるテストのフィードバックとアドバイスをすることができます。
関連の検証テストサービスについてより詳しい情報をお求めの場合は、アリオンのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。