SSD(Solid State Drive)は現在のストレージ市場の主流製品です。台北で開催されたITトレードショー『Computex Taipei 2017』から、3D NAND Flashを搭載したNVMe接続のSSD商品が増加してきました。今やSSDは高性能であるだけでなく、高容量、低価格という利点も兼ね備えた製品となりつつあります。
SSD製品の豊富な検証実績を持つアリオンは、SSD Alliance(SSDA)のメンバーとしても活動しており、今年のComputex Taipei 2017ではSSDAブース内に展示しました。今回の記事では、3D NAND Flashの最新技術と、PCIe/NVMeインターフェイスを採用し始めた後のSSD市場への影響についてお話します。
3D NAND FlashとPCIe/NVMeの性能が飛躍的に向上
SSDの製造コスト、製品寿命、そして読み書き速度には、SSDに内蔵されているフラッシュメモリ記憶素子がキーポイントとなります。現在は、SLC(Single Level Cell)、MLC(Multiple Level Cell)、TLC(Triple Level Cell)という三種類が主流とされています。
SLCは三種類の中で最もデータの読み書き速度が早く、耐久性と需要が高いですが、一般的には最も高価なので主にエンタープライズ向けSSDに使用されています。一方、MLCはSLCほどの性能や寿命が期待できませんが、低コストで製造できるため価格が安く、一般向けとして採用されることが比較的多い形式です。そしてTLCは大容量で最も安価なタイプですが、性能の安定性と寿命についてはMLCより期待できません。
2016年下半期から、何層かのデータ記憶を堆積できる3D NAND Flash技術が採用され始めたことを受け、記憶単位あたりのコストが削減可能となりました。そのため、従来使われていた平面型のフラッシュメモリの物理的な限界を上回り、記憶容量の成長が増加し続けています。例えば、SSDA会員企業のADATA Technology(以下ADATA)がSSDAブースで展示した3D NAND Flash製品「SU900 SSD」は、MLC記憶素子であるにもかかわらず2TBもの大容量を誇っています。
また、3D NAND Flash製造プロセス技術の進化に伴い、TLC SSDの書き換え可能回数が飛躍的に増加しています。2D NAND Flash技術の時代には、単位あたりのストレージを圧縮させる方法で容量を増加させていましたが、これだと書き換え可能回数が減ってしまいます。しかし3D NAND Flash技術の採用によって、TLC SSDは低価格を保ちつつ短命という欠点を克服しつつあります。
アリオンの展示ブースでは東芝製64層BiCS FLASH搭載のNVMe接続SSD XG5を世界で初めて展示しました。これは、チップの体積を変えずに容量を1TBまで増加させています。また、PCI-e Gen3 x4とNVMe Revision 1.2.1を使用することで、読み込み速度が3,000 MB/s、書き込み速度が2,100 MB/sまで向上しています。これにより、データ連続読み込みのパフォーマンスは、従来の6Gb/s SATAと比べて5.4倍、書き込みパフォーマンスは3.8倍となりました。
SSD技術に関する更なる情報については、2016年 SSD技術のトレンドと今後の発展をご参照ください。
エンタープライズ向けSSDへの影響
最新の3D NAND Flash技術は生産コストの低減を可能にしており、更にNVMe規格を利用することで帯域幅も拡大するため、HDDからSSDへの代替ニーズが増加すると予測されます。
例えばサーバでの運用だと、HDDからSSDに置換することでユーザーの待ち時間の短縮が可能となり、データ制御に関する一つの課題が改善できます。SSDが持つ長時間作業下における安定性と高耐久性といった長所を利用して長期的なコストを下げることができるため、将来的にはHDDの代わりにSSDが代替品として採用されることが充分考えられます。それに伴い、市場に溢れるエンタープライズ向けSSD、サーバ作業システム、あるいはハードウェア装置といった様々な組み合わせの中において、SSDの安定性や性能劣化、互換性あるいはその他システム的な障害が発生する可能性が考えられます。
すべてのサーバプラットフォームでの動作試験は、新たな製品であるNVMe SSDの持つ課題とも言えます。例えば、Web取引プラットフォームとしてのデータベースには、同時に複数のユーザーが利用する際、データがランダムな形で大量に送られてくるという高負荷状態になることから、NVMe SSDが高速なRandom Read/Write IOPsを維持可能かという点が重視されます。
エンタープライズ向けSSDは長時間の性能維持が求められます。アリオンの技術チームは、規格がほぼ同一の2種類のエンタープライズ向けNVMe SSD製品(A社vs B社)に対して安定性検証(Stability Test)を実施し、結果分析を行いました。同一サーバ/システムを使用し、9種類の転送効率(図内の右にある項目を参照)で5回ほど繰り返し検証を行ったところ、次のような結果となりました。
図1:A社製 エンタープライズ向けNVMe SSD
図2:B社製 エンタープライズ向けNVMe SSD
A社製のNVMe SSDは各データ量に対してのレイテンシ時間が0.02-0.1秒程と短く、近似曲線も横ばいになっており、ある程度の安定性が見られます。一方、B社製のNVMe SSDはレイテンシ時間が0.05-0.2秒と長く、同データ量であっても回数によってレイテンシ時間が異なっていることが分かります。8K 0/100 RW(薄い青線)を例として挙げると、一回目は0.05秒でしたが、二回目には0.2秒となっています。
エンタープライズ向けSSDのメーカーは、より市場の競争力を高めるため今回行ったような比較分析検証試験を利用し、製品の欠点を改善することが重要です。実際、3D NAND Flash技術及びNVMe規格は、エンタープライズ向けSSDの需要を大幅に増加させているだけでなく、一般ユーザー向けの製品にも大きな影響を及ぼしています。
オンラインゲームの波に乗って コンシューマー市場へ進出
近年、ゲーム用PCと関連製品市場は大幅に成長しています。これまでの一般ユーザーはSSDの価格や品質、性能について懸念を持っていたことから、CPUやメモリー、グラフィックカードなどといったPC性能を向上できるカーネルパーツを優先的にアップグレードさせてきました。高級品を持った現在のユーザーは、ゲーム全体のデータ通信速度の速さやインストール、ゲーム起動、シーンの切り替えなどの状況を重視してきています。従来使われていたHDDと比べ、SSDはデータアクセスが格段に速いことから、ユーザーのSSDに対する期待が高まっています。
図3:Call of Duty: Ghostsをインストールするのに必要な時間
上記図3は、人気ゲーム「Call of Duty: Ghosts」をそれぞれのインターフェイス及びストレージでインストールするのに必要だった時間の比較です。SATA Gen3インターフェイスを搭載したHDD(青)は、ほかのSSD(赤、緑、紫、灰色)を比べると、インストール時間の差が約3倍(19分vs平均7分)となりました。また、NVMe Gen3 x 4を搭載したSSD(橙)との差は約8倍(19分vs 2.5分)ほど開きがありました。今度、より高容量が必要とされるゲームはもっとインストール時間が必要です。SSDを利用することで、こうした状況を改善できることでしょう。
まとめ
SSDは成長を遂げる分野であるという見込みから、SSDメーカー各社はComputex 2017で3D NAND Flashを搭載した一般ユーザー向けNVMe SSDを展示していました。東芝製64層BiCS FLASHを搭載したNVMe接続のSSD XG5だけでなく、ADATA Technologyはプロゲーマー向けSSD XPGシリーズを公開しました。また、トランセンド社も3D MLC NVMe SSD「MTE 850」を発表し、オンラインゲーム向けのSSDマーケットのシェア拡大を目指しています。
一方、3D NAND技術が出現したことで、互換性や電力消費量といった課題が新たに出現しています。現在販売されている1,000種類近いPCシステム、タブレット、RAID、チップモジュールなど、様々なプラットフォーム下におけるパフォーマンスを確認する必要があります。NVMe SSDは保管時あるいは操作中のモードに応じて自動的に電力消費量の切り替え可能です。この機能は、ノートブックやタブレットなどの電力保持性能の向上や長寿命化など、一般消費者にとって重要な要素となっています。電力切り替え機能とシステムの同時作動の際は製品動作の安定性が不可欠となるため、十分な互換性検証の実施を推奨しています。
3D NAND Flash技術及びNVMe技術が今後、従来の2D NAND Flash、SATA Gen3に全面的に加わることで、データへのアクセス速度、高安定性、大容量、価格面など様々な利点をもたらし、エンタープライズ向けの市場を席巻することが予測されます。一般ユーザー向けSSDに対しては、グローバルで流行しているオンラインゲームの波に乗って、PC製品として不可欠なものとなっています。アリオンはSSDAの各会員企業と協力しながらSSD品質検証サービスを提供することで、次世代のSSD開発に貢献しています。
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